(続き)・・続いて生体の物質的側面を支える液体である「血」の異常としては大きく2つあります。一つは血の量が不足している「血虚(けっきょ)」、二つ目は血の流れがスムーズに行かず、途中で停滞したり途絶えてしまう「瘀血(おけつ)」です。生体を自動車に譬えると、ガソリンに相当する血がそもそも不足していて十分に走れない状態を血虚、ガソリンはあるもののスムーズに流れず滞ってしまい、うまく走れない状態を瘀血と表現することも可能です。
血虚の状態では、様々な場所に栄養や潤いが不足してきます。その結果として集中力低下、不眠、眼精疲労、めまい、こむら返り、月経不順、頭髪が抜けやすい、皮膚の乾燥や荒れ、爪が割れやすい、などといった症状に見舞われます。診察所見として貧血、爪や頭髪の異常、皮膚炎などがみられます。原因としては脾や胃の機能低下、栄養失調、失血、月経過多などが挙げられます。治療の原則は血不足の原因を絶ち、血を補う食事を摂ることなどです。
次に瘀血の状態では、停滞した血は血栓のような有害物となり、周囲に熱や痛みなどの症状を発生させます。そのために眼輪部のクマ、肌荒れ、腹部や腰部などの痛み、不眠やイライラ感、便秘、月経痛などをもたらします。診察上は眼輪部や顔面の色素沈着、口唇や歯肉、舌の暗赤色化、腹部圧痛などがみられます。原因としてはストレス、過食とくに油脂分の摂りすぎ、睡眠不足などが挙げられます。治療の原則はストレスの緩和や過食の防止などがあります。
「水」とは血以外の全ての体液のことで、肌や髪の毛、内臓、脳髄、関節内など身体各部を潤します。従って水のトラブルはその潤いを失わせたり、逆に余分な水が各部に停滞し、様々な不具合が生じます。代表的なトラブルとしては、水の滞りで発生する「水毒(すいどく)」が挙げられます。これは水を体内に運ぶ心や肺などの不調により余分な水が体の各部にあふれ、その周囲の気や血の流れも阻害して様々な症状をもたらします。
水毒の状態では、水の滞る場所によって特有の症状が現れます。全身に一様に停滞すると「水太り」の状態となり、全身浮腫やめまい、下痢、頻尿などが現れます。胸内に停滞すると水様性の痰や鼻水、ぜんそく発作などがみられます。関節を中心に停滞すると関節炎や関節のこわばりなどをもたらします。原因としては心や肺の機能不全のほか、体の冷えやストレスなどが挙げられ、治療の原則としては保温や利尿作用のある食材の摂取、ストレスの緩和などがあります・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
あなたの自然治癒力を引き出し心身の健康づくりをサポートします
病気を治したり予防するにあたり、いちばん大切なのは、ご本人の自然治癒力です。メンタルヘルスを軸に、食生活の改善、体温の維持・細胞活性化などのアプローチを複合的に組み合わせて自然治癒力を向上させ、心と身体の両方の健康状態を回復へと導きます。
このコラムに類似したコラム
米国生まれの点滴「マイヤーズカクテル」・・にんにく注射を上回る効果!? 吉野 真人 - 医師(2013/04/05 18:13)
心も体もニュートラルな状態 山中 英司 - カイロプラクター(2011/12/14 18:41)
「1億総半病人」日本の救世主か!?東洋医学の真骨頂とは(6) 吉野 真人 - 医師(2010/10/31 07:00)
花粉症の対策に 市原 真二郎 - カイロプラクター(2016/02/28 11:44)
こんな時、どういう風にすればいいか判らないの。 みかん - 人体調律師 ・ 鍼灸マッサージ師(2014/04/25 10:00)