せいさつ(094)真実とは何か? プラトンの「洞窟の比喩」 - 人材育成全般 - 専門家プロファイル

中沢 努
パンセ・ソバージュ・アンド・カンパニー 代表
東京都
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せいさつ(094)真実とは何か? プラトンの「洞窟の比喩」

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せいさつ 100~091


私たちは通常、身の回りに起こったできごとを自ら認識し、事実や現実として受け止めています。
自分自身で認識したのですから、普通は、受け止めた内容を疑いません。
受け止める際の解釈の仕方が間違っているかもしれないなどの疑いを持つことはあっても自分の判断や解釈だという現実感自体を疑う人はあまりいないでしょう。

しかし、それは本当に正しいのでしょうか?
哲学者プラトンの教えの中に洞窟の比喩というものがあります。

その一部を紹介しましょう。

(引用1)
地下にある洞窟状の住いのなかにる人間たちを思い描いてもらおう。光明のあるほうへ向かって、長い奥行をもった入口が、洞窟の幅いっぱいに開いている。人間たちはこの住いのなかで、子供のときからずっと手足も首も縛られたままでいるので、そこから動くこともできないし、また前のほうばかり見ていることになって、縛(いまし)めのために、頭をうしろへめぐらすことはできないのだ。
(引用2)
彼らの上方はるかのところに、火が燃えていて、その光が彼らのうしろから照らしている。この火と、この囚人たちのあいだに、ひとつの道が上のほうについていて、その道に沿って低い壁のようなものがしつらえてあるとしよう。それはちょうど、人形遣いの前に衝立《ついたて》が置かれてあって、その上から操り人形を出して見せるのと、同じようなぐあいになっている。
(引用3)
・・・そのような状態に置かれた囚人たちは、自分自身やお互いどうしについて、自分たちの正面にある洞窟の一部に火の光で投影される影のほかに、何か別のものを見たことがあると君は思うかね?
〈引用一部省略 プラントン「国家」より〉

さて、ここで出てきた「洞窟の中で暮らす人たち」を「普通の庶民」に置き換えるどうなると思いますか?
私なりに発展的解釈をしてみるとどうなるか・・・ちょっとやってみました。

 (A)私たちは影を見ているにもかかわらず「自分の目で見たものだから真実に違いない」と無自覚に思い込んでいる。
 (B)本当の真実は火であり、影は仮の姿に過ぎないことに誰も気づいていないし、気づこうともしない。
 (C)
私たちが見ているのはあくまでも仮象である。
 (D)
真実を見るためには、陰のおおもとである光源(=影を映し出している火)を見なければならないのに、それを見ていない。

そして私は、様々な出来事に一喜一憂している世間を見るたびに次のように思ってしまうのです。

 (E)私たちは、現実という名の劇場で、社会の出来事を映し出すスクリーンだけを見て暮らしている。
 (F)
私たちは自分の背後にいろいろな種類の模型を持った人形遣いが隠れていることに気づいていない。
 (G
)彼らの正体は「これまでの社会秩序や序列構造をリードしてきた組織や個人」。
 (H)
人形遣いたちは自分の財産や既得権を守ることに汲々としている。
 ( I )
彼らが持っている模型は自分の魂胆をきれいに隠し効果的に見せるための道具。
 (J)
人形遣い達は自分たちの都合に合わせて模型を自在に操る。
 (K)
社会を右に誘導しようと目論むAはそれが民衆の幸福につながると思わせる人形芝居をうち、「これが真実だ」と叫ぶ。
 (L)
右に進まれると既得権が脅かされることになり困るBはそんなことはないと思わせる人形芝居をうち、「だまされるな。右に進むと不幸になるぞ」と叫ぶ。
 (M)
私たちは2つの芝居のそれぞれに一喜一憂する。
 (N)
Aを真実と思い込む人もあり、Bこそが真実だと思い込む人もある。
 (O)
どちらも仮象にすぎず、それがどちらも民衆に不幸をもたらしかねない眉唾ものの芝居かもしれないのに。
〈以上、中沢努 発展的解釈結果より〉

さて、あなたに質問です。

 ・もし、あなたが見ているこの現実が「全てお芝居」だったとしたら、様々な出来事に一喜一憂していた自分をどう思いますか?
 ・そして、そういう現実を生きてきたあなたは、これまでの自分の人生をどう評価しますか?

(中沢努「思考のための習作」から抜粋)


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