どろぼうなのか・・？

何年か前、とある店舗を建設中の話です。

我々のような設計事務所にデザインを頼んでくるような店舗ですから、チェーン店や会社経営のお店ではなく、個人経営のお店です。

広い主要道路に面した立地の良い敷地なのですが、隣は住宅でした。

その店舗の床はイタリア産のタイル貼り・・ちょっと高価ですが、デザインがお施主さんも私もたいへん気に入って決めた物です。

壁はメープル（楓）のローリングカット杢目板張り、このころたいへん私が気に入っていた凄く杢目柄の綺麗な板張りです。

その床のタイルを貼っている時のことなんですが、タイルが途中で足りなくなっちゃった！

２／３くらい貼った所で・・アレッ？アレッ？

高価なタイルですから、ギリギリしか発注してないんですね・・、それにしたって素人じゃないんだから・・？

当然私は怒ります！・・

 
何やっとんじゃお前ら！

 
現場監督とタイル屋は困惑顔です・・、アッレー？おっかしいな？そんなはずは・・。

しょうがないので又、発注して張り出します。結構な面積ですし、１枚１枚手貼りですから時間が掛かります。

で・・・、又、足りなくなった！

 さすがに、そうなると、どうもおかしい？と誰もが考えます。

 監督やタイル屋は今回厳重に数量を管理していましたから・・、「先生！どうも盗まれてるようです！」

 
なんと！

誰が！

 
こういう時、一番疑われるのは内部犯行なのですが・・、調査開始です。

 後日、監督が呼びに来ました。

「先生 、ちょっと来て下さい！」

 「あれ！・・あそこ見て下さい！」

 私が見ると・・・絶句！

隣の家のテラスに・・・まさにうちの床のタイルが貼ってある！

イタリア産の新作輸入タイル、こないだまでは日本にはなかった、そこいらでは売っていない住宅などではとても使えないくらい高価な新商品が・・・貼ってある！ 

堂々と、そんな所に貼ったらすぐばれるのに、お構いなしで・・。

それからも、どんどんなくなる壁材やペンキやボード類！

 お施主さん曰く・・、「たいへん申し訳ないですが、実際工事で迷惑は掛けてますし、これからずっとやってくお隣さんなので、あんまり事を大袈裟にしたくないんです・・」

「昔からちょっと変わった人達で・・」

でも、これは立派な犯罪です、泥棒です。

お施主さんが損失分を補填してくれれば工務店はそれで良いのですが・・でも・・ちょと違うんじゃないかとは思うのですが・・・。

 かくして、お隣さんは材料費無料でリフォームを完了したのでした。

現場というのは、どんなに厳重に対策しても、その気になればどっからでも入れちゃうんですよ・・。

 
お施主さんの監視後談です。

 「現場の休みには家族そろって現場内を散歩して歩くのがお隣さんの日課だったみたいですね」。

なんじゃそりゃ。

アトリエ繁建築設計事務所ＨＰ
http://homepage3.nifty.com/ateliershigeru/