- 塚本 有紀
- フランス料理・製菓教室「アトリエ・イグレック」 主宰
- 大阪府
- 料理講師
対象:料理・クッキング
- 黄 惠子
- (料理講師)
昨年の初夏、教室で「完熟の梅で浸けた梅酒はおいしいのかどうか?」が話題になりました。そういえば、梅酒といえば青梅で作るのが定番です。とある生徒さんからは「黄色い完熟梅で作ると、雑味が多いからだめです」という意見を聞きました。はたしてそれは本当なのだろうか? とその時思いました。なぜなら完熟の梅からは、桃やアプリコットに共通する何ともいえない魅惑的な香りが漂うからです。あれが、雑味になる? 梅酒で有名なチョーヤの方に聞くと「それはそれでおいしいですよ」との答え。ではどうおいしいのかしら?
こうなったら、もう自分で確かめるしかありません。1年近く待って、今年の6月に青梅と完熟の黄色い梅を使い、それぞれ同じ%のアルコールと砂糖で梅酒を浸けてみました。さらにはもう1セット作り、それぞれの梅を果糖(砂糖の7割の量で同じ甘味度とされる)でも浸けてみました。
最短の1ヶ月を待ちかねて、7月の末にようやく瓶を開けてみました。完熟梅の梅酒からは、ふくよかな、果物らしい華やかな香りが漂います。いっぽう青梅のほうは香りもなく、渋くてえぐくて飲めません。砂糖の量をかなり低く押さえたことも理由でしょう。果糖で浸けたほうは、果糖の性質である「通常のグラニュー糖よりも果物の味や香りがクリアに全面にでる」性質のおかげ(?)で、さらにえぐく感じられ、まったく飲めたものではありません。
(ほうら、やっぱり。完熟梅こそすばらしい香り!)と、内心では得意満面な気持ち・・。
さらにもう1ヶ月待って、ようやく青梅の梅酒が飲めるレベルになってきました。完熟梅のほうは香りが熟れて丸くなってきました。そしてここにきてようやく雑味の意味について思い至りました。つまり短時間なら完熟梅の華やかな香りが梅酒の中でイキイキと開きますが、たぶんこれを長い時間寝かせるときっと雑味に変わってしまうということです。逆に青い梅はある程度じっくりと時間をかけてこそ、おいしく熟成するということ。
私のようなせっかちは、浸けたらほんとはすぐにでも飲んでみたいもの。ひとまず黄色い完熟の梅酒を飲み始め、なくなったところから青梅酒に変えるのは我ながらとてもよいアイデア! そんなことを思いつつ毎日ちびちび飲んでいたら、ひとつ問題が発覚しました。もうすぐ完熟梅酒がなくなりそうで、雑味になるのを見届けることができないかもしれません・・。チョーヤの方によると、完熟の梅を使う場合は早めに取り出すのがよいそうです。
まだまだ完熟梅の香りが充分ある間にと思い、お菓子教室でアイスクリームに仕立ててみました。かなりしっかり梅酒を入れていますので、アルコールに弱い方とお子さんは気をつけてください。逆に強い方にオススメなのは、器にアイスクリームを盛りつけた後、さらに梅酒を回しかけること。よりいっそうさわやかに美味です。
青梅酒を飲み終わるころには、青梅の実を使ってソルベにしてみるつもりです。
梅酒アイスクリームの作り方 6人分
牛乳 250g
生クリーム(47%) 100g
卵黄 3個
グラニュー糖 60g
梅酒浸けの梅の実 65g(約3粒分)+梅酒 45g
1. 梅の実は刻み、梅酒に浸けて、冷凍庫に入れておく。
2. 鍋に牛乳、生クリーム、卵黄、砂糖を入れ、泡立て器で充分に混ぜる。*泡立てない。
3. ゴムべらに持ち替え、中火にかけて、かき混ぜながら充分なとろみを付ける。*83-85℃程度まで。
4. 漉しながら氷水につけたボウルにあける。温度が下がるまで混ぜ続ける。
5. 充分に冷蔵庫で冷やしてから、アイスクリームマシンにかける。あるいはいったん冷凍庫でブロック状に冷やし固め、これをフードプロセッサー(あらかじめ容器を冷凍庫に入れておく)にかけてふんわりさせる。
6. 冷やしておいた梅と梅酒を混ぜる。
なおアイスクリームは糖度とアルコールの割合が高くなればなるほど固まりにくくなりますので、ご注意ください。
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