不正行為に基づく抗弁の成立要件(第5回) - 特許 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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不正行為に基づく抗弁の成立要件(第5回)

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不正行為に基づく抗弁の成立要件

~自社関連出願の「重要性」と「欺く意図」~(第5回)

Shanghai Meihao Electric Inc.,
Plaintiff Appellee,
v.
Leviton Manufacturing Company, Inc., et al.,
Defendant-Appellant.

河野特許事務所 2010年9月24日 執筆者:弁理士  河野 英仁


(3)関連訴訟の情報
 CAFCは関連出願の情報も提示すべきであり、訴訟情報の開示ミスも「重要」であると判示した。

 M社は766特許が発行されるまでに12の訴訟が提起されたと主張した。これらの訴訟は766特許の親出願に関するものであり、766特許の審査過程においてPTOに訴訟情報を提供すべきであったと述べた。

 過去の判例*10及びMPEP2001.06(c)*11に基づけば、先の関連する訴訟の存在自体は重要な情報であると判示している。L社は事件の存在及び事件の中から重要な情報を開示すべきであり、CAFCは当該訴訟情報の開示ミスは重要であると判断した。

争点2:積極的な虚偽の陳述はなく、欺く意図を推論した地裁の判断は誤りである
 CAFCは、L社がGermain出願及び訴訟情報を提供しなかったことを根拠に、「欺く意図」を推論した地裁の判断を取り消す判決をなした。

 過去の判例によれば、「欺く意図」は、全ての証拠の観点から分析しなければならない。ここで「欺く意図」は、直接証拠により証明される必要はなく、むしろ、一般に譲渡人・発明者等を取り巻く間接的な事実及び状況から推論される*12

 たとえ、開示されていない情報が「比較的重要な情報」であったとしても、特許権者がもっともらしい説明をした場合、不正行為は推論されない*13。L社は、766特許はGermain出願に対し、3年以上も早い優先日を有することから、Germain出願を審査過程において開示しなかったと述べた。

 CAFCは、地裁がPTOに対するGermain出願及び関連訴訟の情報提供ミスに基づき「欺く意図」を推論したが、これは不作為であり、積極的な虚偽の陳述ではないと判断した。また、CAFCは、「譲渡人同一の出願または関連する訴訟の開示ミス」に関しては、過去には不正行為を認めておらず*14、これ以外の開示ミスについてのみ不正行為を認めているにすぎないと述べた。

 CAFCは、以上の理由により、L社発明者に対するヒアリングを行うことなく「欺く意図」を推論した地裁の判断を無効とした。

                                    (第6回へ続く)

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