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対象:特許・商標・著作権
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プリアンブルの記載と特許性
~プリアンブルに使用目的を記載しても新規性は主張できない~ (第4回)
Jeffrey Griffin., et al.,
Plaintiffs Appellants,
v.
Heidi Marrin., et al.,
Defendants-Appellees.
河野特許事務所 2010年7月24日 執筆者:弁理士 河野 英仁
4.CAFCの判断
プリアンブルにおける発明の目的または使用目的の相違は新規性主張の根拠とならない
CAFCは、プリアンブルにおける使用目的の記載はクレームの構成要件として扱われず、新規性を有さないと判示した。CAFCは、プリアンブルにおける目的の記載は、構成要件から排除されるという判例に基づき当該判断をなした。
例えば、Catalina事件*3では、「システム」と「システムのタイプ」がプリアンブルに記載されており、CAFCは、「システム」は構成要件に該当するが、「タイプ」は構成要件に該当しないと判示した。
Intirtool事件*4では、プリアンブルに「ハンドヘルドパンチペンチ」と、当該ペンチの使用目的が記載されていた。CAFCは、「ハンドヘルドパンチペンチ」の部分については構成要件と認めたものの、ペンチの使用目的は構成要件の部分ではないと判示した。
CAFCはこれらの判例に基づき、プリアンブルにおける「筆記具の使用なしにユーザにラベル上に記入することを可能(for permitting)とする」の目的の記載は、クレームの構成要件ではないことから、ボディが同一のMalinovtz特許からみて新規性がないとの判断を維持した。
5.結論
CAFCは、ボディに同一の技術が開示されたMalinovtz特許を理由に、新規性がないとした地裁の判断を維持する判決をなした。
6.コメント
この判決に対し、Newman判事は反対意見を表明している。Newman判事は、クレームに記載された構成要件を削除してクレーム解釈を行うことは適切でなく、これはクレームのプリアンブルについても同様であり、プリアンブルの記載を排除した発明について、新規性の有無を判断した判決は妥当でないと述べた。
一般的に、「プリアンブルの文言がクレームに意味合いを与え、かつ、発明を適切に定義する場合、当該プリアンブルに現れる文言は、クレームの限定と見なされる。*5」
Applied事件*6においては、以下のとおり判示されている。
「発明の目的及び発明の背景に言及するプリアンブルが、クレームされた発明の構成要件となるか否かは、クレームの形態全体、明細書に記述された発明、及び審査過程で示された記述に基づき、各事件の事実により決定される。」
またNewman判事は以下のように述べている。以上の判例における判示事項に基づけば、プリアンブルの文言を切り捨ててクレームの解釈を行い、特許無効とした本判決は、これらの判例に矛盾するといえる。クレーム作成者は、クレームされた発明の主題を定義するためにプリアンブルとボディとの双方を選択的に用いて、クレームを作成する。新規性の判断も、プリアンブルとボディとの双方により定義された発明について行われるべきである。448特許明細書に基づけば、当該発明は、公知のスクラッチオフ技術そのものではなく、筆記具なしにユーザが表面を刻むことができるスクラッチオフラベルであるということを明らかにしている。そして、このプリアンブルの使用目的のフレーズは、当該観点を明確にするクレームの一部分といえる。従って、本事件においてプリアンブルにおける使用目的の記載を構成要件から排除して、新規性の判断を行った判決は妥当でないと結論づけている。
本事件ではプリアンブルにおける発明の目的または使用目的の記載は、構成要件から排除され、新規性及び非自明性(米国特許法第103条) *7を主張する上での根拠とならない点が判示された。新規性または非自明性を主張する場合、ボディに発明の目的ではなく、具体的な構成上の差異を追加し特許取得を試みるのが大原則である。しかしながら、先行技術との相違点がもはや明細書に存在しない場合、何とか特許を取得すべく発明の目的または使用目的をクレームに追加することがある。この場合、本事件で判示された如く、プリアンブルに追記しても意味はなく、少なくともボディに追加することが必要であるといえよう。
判決 2010年3月22日
(第5回へ続く)
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