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対象:特許・商標・著作権
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米国特許判例紹介:特許権侵害と差止請求権
〜230億円の損害賠償と永久差し止め〜(第4回)
河野特許事務所 2010年7月15日 執筆者:弁理士 河野 英仁
i4i Limited Partnership, et al.,
Plaintiffs- Appellees,
v.
Microsoft Corp.,
Defendant- Appellant.
4.CAFCの判断
争点1:イ号ソフトウェアは永久差し止めの対象となる。
CAFCは、eBay4要件を全て具備することから、イ号製品の永久差し止めを認めた。以下各要件のポイントについて説明する。
(1)第1要件 回復不可能な損害 特許権者が回復不能な損害を被ったか否かを決定する場合、特許権者のマーケットシェア、収入、及び、ブランド認識等が考慮される*5。カスタムXMLの分野において被告及び原告が直接的な競合にあり、イ号ソフトウェアによる侵害に起因して原告製品は陳腐化し、原告マーケットシェアは大きく低下した。原告は事業を存続すべくビジネス戦略を変更せざるを得なかった。CAFCは以上の状況を総合的に勘案して、原告は被告により、回復不可能な損害を被ったと認定した。
(2)第2要件 法による不十分な救済
本事件においては、原告が製品を投入した前後において、被告もイ号ソフトウェアの販売を開始した。原告は特許製品の独占を希望しており、以前に他社にライセンスを認めていない。
また、大企業である被告の実施により、小企業である原告は、マーケットシェア、ブランド認識及び顧客へのグッドウィルの喪失を蒙った。原告はイ号ソフトウェアにより、カスタムXML市場の80%を失い、ビジネス戦略を変更せざるを得なかった。このような侵害行為に基づく原告の損失は定量化することが困難であった。CAFCは、金銭損害額を定量化することが困難な場合、法による十分な救済が不十分であることの裏付けになると判断し、第2要件をも満たすと結論づけた。
(第5回へ続く)
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