- 吉野 充巨
- オフィスマイエフ・ピー 代表
- 東京都
- ファイナンシャルプランナー
対象:住宅資金・住宅ローン
- 伊藤 誠
- (ファイナンシャルプランナー)
- 伊藤 誠
- (ファイナンシャルプランナー)
このところ、このサイトで「変動金利と固定金利どちらが良いのか」とご質問が数多く寄せられています。
私はそれらへのお答えとして、固定金利をお勧めしています。今回はこの固定金利と変動金利について、述べたいと思います。
まずご存知の通り、固定金利とは借り入れ金利が返済期間一定である金利を言います。
もし、3,000万円を返済期間30年、元利均等払い、金利2.570%(フラット35の7月適用金利最頻値、手数料・団信料等含まず)で借り入れたといたしますと
総返済額は 43,067,061円=元本30,000,000円+利息13,067,061円 です。利息が1,300万円も支払うことが分かります。確かに利息が少なくなれば助かります。毎月の返済額は、119,630円です。年間では1,435,560円になります。
一方、某M銀行の変動金利の利率は1.075%((7月提示価格、手数料・団信料等含まず、検索サイト調べ)です。この場合の毎月の返済額は97,528円になり、毎月22,102円も安くなります。差は殆ど利息分です。
このまま30年変動金利が変わらなければ、利息は差し引きで7,956,841円少なくなります。
ただ、前提は30年間金利が変動しないことです。
ところで、下のグラフは、日本銀行の統計で、国内の無担保レート月平均/金利(赤)と基準割引率及び基準貸付利率(青)の推移グラフです。
日本銀行と都市銀行間の金利ですので、銀行の個人への貸出金利とは異なりますが、銀行の住宅ローン金利等の変動金利のベースとなるものです。
確かに1994年以降は1%を切っています。ただし10年単位で考えた場合、30年前1980年は貸付金利は9%(青)で、25年前は5%(青) 20年前の1990年は約8%(赤) でした。その後金利は下降したままですが、今後も続くという可能性は、まさに不確実(リスク)です。
もし、5年ごとに1%上昇したら、または10年ごとに2%上昇(それでも20年後は5.075% です)したらどうなのかを考えてみては如何でしょう。
例として上記変動金利にさまざまな利率をシミュレーションすると以下の通りです
1.10年ごと1%上昇は、金利1.075%⇒2.075%⇒3.075% 月々の支払い97,528円⇒107,254円⇒112,547円
利息総額は8,079,539円 この場合には、固定金利より変動金利が有利です。
月々の支払いも固定金利より少なくて済みます。
2.10年ごと2%上昇は金利1.075%⇒3.075%⇒5.075% 月の支払い97,528円⇒117,553円⇒129,107円
利息総額 11,302,499円 この場合もトータルでは変動金利採用が有利です。ただし、3番目の金利時の月々の支払いは、固定金利より9,477円増加します。
3.5年後に1%上昇 1.075%⇒2,075% 月々の支払い97,528円⇒109,643円
利息総額 8,744,747円 この場合は変動金利が有利です。
4.5年後に2%上昇その後継続 1.075%⇒3,075% 月々の支払い97,528円⇒122,622円
利息総額 12,638,415円 この場合にも変動金利がトータルでは有利ですが、ただし、5年後からは月々の支払いが2,992円増加します。
5.5年後に3%上昇 その後継続 1.075%⇒4,075% 月々の支払い97,528円⇒136,437円
利息総額 16,792,804円 この場合は変動金利の採用が不利に働きました。そして、月々の支払いも16,807円増加してしまいます。
シミュレーションから分かることは
2.の例のように、10年間は現在の金利が継続し、10年ごとに平均で1%上昇する程度の変化、
4.の例のように、今後5年間は現在の金利が継続し、その後の2%程度しか金利が上昇しない。
という今後もある程度低金利が継続することが、変動金利採用の条件になります。
ただ、家計は時限爆弾を抱えたまま運営することになります。また、30代で購入すると10年後はお子様が小学生、20年後は大学入試や大学に通っており、学習費の負担も重なります。
年代ごとの学習費の支払い状況を掲載します
負担がかかる時期に月々の支払いが増加しますと、収入の増加が無ければ、家計の切り盛りは困難になります。
なお、金利上昇時に変動金利のローンを固定金利に変更する際には、固定金利はすでに上昇しておりますので、現在の固定金利相当の金利では借り換えができません。
先月号(弊社が発行するレター『FPからのお便り』)にも記載いたしましたが、日本国債の発行残高はきわめて大きく、また政府の債務負担もありあと数年で個人の貯蓄額1400兆円のうち実質的な購入可能額1,000兆円を超える見込みです。その後は外国投資家にも購入を促す事態になれば、金利の上昇の可能性が高いものになります。
以上のことを考えますと、現時点では不利(損をする)と感じる固定金利での住宅ローンの借り入れをお勧めします。
前ページのグラフにもありましたように金利の下降は急激でした。金利上昇も急激に変化しないとは限りません。
当該コラムは、私が発行している『FP殻のお便り』7月号の記事を参考としています。
FPからのお便りページ
http://www.officemyfp.com/fptayoritop.html
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