「白川静 漢字の世界観」(松岡正剛/平凡社新書) - コラム - 専門家プロファイル

高安 重一
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閲覧数順 2024年04月18日更新

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「白川静 漢字の世界観」(松岡正剛/平凡社新書)

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お盆に中国と韓国に行ったので、漢字文化圏のことを理解できればと思って。
「白川静 漢字の世界観」(松岡正剛/平凡社新書)を読み終わる。

白川静の仕事がいかに凄いことかと言うことをわかりやすく伝える、白川入門の本。
1910年に生まれて、14才の時に夜学に通いながら、
「万葉集」と中国の「詩経」と言う書の比較研究を考えたとのこと。

それを96才まで生涯通して貫いていたという事実が凄い!
学閥や派閥からは異端と思われて、あまり評価はされていなかったようだけれど、
最後には誰もが認める漢字の解明者となっていた。

具体的には「字統」「字訓」を書き上げて、
最後には9年をかけて86才で「字通」という3部作を完成させている。
簡単に言うと甲骨文などの漢字の始原を研究して、漢字の成り立ちを解き明かして、
一人で漢字の辞典を作ったと言うことになる。

民俗学的な観点から、漢字は古代中国の王の呪能が発生の元であるという解釈で、
一字一字を解き明かし、
同じような解釈で、万葉集の柿本人麻呂や額田王の歌の大胆な新解釈を行う。
漢字一文字だけでなく、
万葉のゆったりした自然の美しさを歌ったと思われていた歌の世界観も、
古代共同体の祭事や呪能の表れではないかという、
一貫した仮説を通じて説明を行うところは、劇的な展開で世界が一つにまとまった感じがする。

中国では発音記号やふりがなのようなものが無いので、各地で読み方が混乱しているが、
日本では仮名を発明したことで、漢字の世界を広げたと言うところも興味深い。

韓国には5年ぶりに行ったけど、
漢字はすっかり無くなって全てハングル文字だけになっていた。
それがわかりやすいひらがなだけの世界だとすると、
漢字文化の歴史が断たれてしまって、
そのままだととても大きな影響が現れるのではないかと、とても気になってしまう。