裁判員裁判、判決下る - コラム - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士

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裁判員裁判、判決下る

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裁判員制度を適用した最初の判決が6日、東京地裁で下された。
初めての裁判員を経験した7名のコメントを見ると、無事に終えて
ほっとした様子が見て取れる。
7日1時28分YOMIURI ONLINE記事はこう報じた。

全国第1号の裁判員裁判となった東京都足立区の路上殺人事件で、殺人罪に
問われた無職藤井勝吉被告(72)の判決公判が6日、東京地裁で開かれた。
秋葉康弘裁判長は懲役15年(求刑・懲役16年)を言い渡した。
判決後、最後まで審理に立ち会った裁判員6人と、補充裁判員1人の全員が
記者会見し、「大役を終えてほっとしている。次の人も嫌がらずにやって
ほしい」などと語った。
判決は、争点になっていた殺意の強さについて、藤井被告がサバイバル
ナイフを被害者の上半身に3回にわたって深く突き刺したことなどから、
「被害者を死亡させると分かりながら、強い攻撃意思を持っていたと
認められる」と強い殺意があったと認定。
「結果は重大で、動機は身勝手。刑事責任は重い」と述べた。
判決後、7人が約1時間、同地裁で記者会見に臨んだ。
7人は、いずれも氏名は明かさなかったが、職業、年齢を明らかにした。
職業は会社員が3人いたほか、ピアノ教師、栄養士、契約社員などで、
年齢は38歳から61歳だった。
裁判員を務め終えた感想については、契約社員の女性(38)が、「私のような
一般の女性が参加できるか不安だったが、裁判官やほかの人たちと一つの
ことを成し遂げて、一段落ついた気持ち」と語った。
裁判手続きや検察、弁護側双方の立証に対しては、全員が「分かりやすかった」
などと回答。
特に、モニターを使ったり、冒頭陳述の内容を1枚の紙にまとめたメモを
提供したりした点は好評で、女性栄養士(41)は、「学校の授業で配られる
ような資料で、分からないことはなかった」と述べた。
今回の審理期間については、今回の事件に限れば4日間が適切という声が
大勢を占めた。
刑を言い渡す負担については、「最後までこれで良かったのかは分からないが、
決めなければならない。つらい部分も感じている」(50歳の女性会社員)、
「色々と話し合う中で気持ちが揺れる。心が揺れて大変だったなと思う」
(51歳の女性ピアノ教師)と、多くの人が裁くことの重圧を訴え、中には
「昨晩は判決や評議のことを考えて午前3時ぐらいまで眠れなかった」と
話す人もいた。
これから裁判員になる人に対しては、アルバイト男性(61)が、「裁判所に
対して市民の声が反映される制度。個人個人が声を上げていかないと
社会は変わらない。嫌がらずにどんどんやってほしい」、補充裁判員だった
会社員男性(38)が「自分自身の成長の場になると思う」と呼びかけるなど、
全員が今回の経験を肯定的に受け止めていた。
秋葉裁判長は判決後、「裁判員、補充裁判員の方々には熱心に審理や評議に
参加いただき、大変感謝している。裁判官と裁判員とが一つになって
裁判を行うという裁判員制度の目的にかなった、充実した裁判であったと
考えている」とするコメントを出した。


これまで法曹資格者に独占されてきた司法が、規制緩和の一環でもあろうが、
裁判員制度の導入を機に、一気に開放されることになった。

一昨日の裁判員からの質問について、被告弁護人から、法曹の常識からは
考えられなかった質問との趣旨のコメントがあったが、良くも悪くも
市民感覚が法廷の場に持ち込まれたことは評価されよう。

ただ、裁判員制度が本当に機能するかは、今後の課題になろう。

今回の審理は、事実関係に争いがなく、量刑のみを判断すればよいもので
あったが、多くの裁判は、事実認定の時点から争いがあり、何が事実なのか、
地裁と高裁の判断が異なるケースも多々見受けられるのが実情である。

そうなると、法律の知識の無い一市民が事実を誤認した場合に、冤罪を
産んでしまうケースが想定される。

ニュースで容疑者として報道された場合、容疑者=犯人と誤認して、
悪いヤツとの先入観を持ってしまうのが、一般市民の感覚であろう。
しかし、容疑者はあくまで容疑者であって、犯人ではない。
犯人であるかどうかの判定が裁判所の役割である。

ここに市民感覚が持ち込まれることは果たしていいことなのだろうか。
私は若干の危惧を感じている。

それに証拠調べに相当の時間が必要な事件もあろう。
裁判員が拘束される日数は今回は4日間の集中審議だったから短かったが、
重大事件であれば、それこそ数ヶ月に及ぶことも想定されるのではないか?
裁判員は専門の裁判官と違い仕事を休んで法廷に出ているのだ。
裁判の長期化は裁判員制度の根幹を揺るがしかねない事態である。

しかし、裁判員制度を維持するために、集中審議を強行することに
適さない性質の事件も多い。
むりに強行すれば、それこそ冤罪を産みかねない。
そこにジレンマがある。

裁判員制度の導入には一定の評価をするところであるが、それは量刑の
判定に限られるべきではないか、と私は思う。

そして、開かれた裁判所に対して、国民の目がキチンと向けられ、
おかしな判決を下す市民感覚からかけ離れた裁判官を駆逐できれば
いいのでは、と思うのだ。

私自身は思想的な理由と守秘義務から裁判員要請は辞退するつもりだが、
司法が開かれたものになること自体は否定するつもりは無い。
むしろ歓迎すべきことだと思う。

とりあえず無難にスタートした裁判員制度の今後に注目したいところである。