痴呆の祖母から愛を感じる - コラム - 専門家プロファイル

宮本 ゆかり
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閲覧数順 2024年04月18日更新

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痴呆の祖母から愛を感じる

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最近、身内で葬儀が行われました。

従姉妹の父親が突然亡くなったのです。

父方の親族は、いろいろ不仲な問題があり、葬儀を行なうことは簡単ではありませんでしたが、父の話によると、なんとか無事に執り行われたようです。

私にとって伯父〔父の弟〕はまだ63歳でしたが、突然の不整脈で倒れ、救急車で運ばれた翌日には息をひきとってしまいました。

振り返ってみると、この伯父は壮絶な人生をおくった人でした。
若い頃から放蕩の限りを尽くし、50代の時に土木関連の仕事で大怪我をしてからは、ほとんどアルコール中毒患者のような引きこもりの生活をしていました。
その後、生活保護を受けながらも、パチコンにハマって借金苦の状態。
子どもや兄妹達からも、呆れて見放されるような孤独な生活が長年つづき、それでも奥さんだけは何とか寄り添っていたので、最期は奥さんに見取られて逝きました。

この伯父は4人兄弟の二番目。
一番上の長男が私の父で、下には二人の妹がいます。
今回の葬儀にあたっては、本来ならば、妻や成人した子ども達が喪主を務めなければならないのですが、事情があってできず、私の父が取り仕切ることになりました。
実は、伯父は兄妹達とも断絶状態にあったので、葬式は本当にごく身内だけの密葬という形で行われました。

ここからは、私が父から聞いた不思議な話です。

葬儀当日。
火葬場に行くと、知らせてもいないのに、なんと母方〔私にとって祖母〕の親戚が大勢いたそうです。
実は、同じ日に別の親族〔父にとっては従兄弟〕がやはり若くして突然亡くなり、同じ日に同じ場所で葬式をしていたのです。
しかもそちらの故人〔父の従兄弟〕は、奇しくも、亡くなった伯父自身が、昔、仲人をやったということでした。
まるで引き合わせられたかのように、思いがけず、何十年ぶりかで親族が懐かしい対面をすることになったわけです。

また、この日、私の祖母〔伯父にとっては母親〕も参列していました。

実は祖母は95歳の高齢で、重度の痴呆症です。
自分の子どもの顔と名前すらわからない状態なので、数年前から、施設に入居しています。

今回、伯父の葬儀に際して、この祖母を参列させたのですが、〔どうせ事情はわからないだろうと思いつつも〕遺体を前に事情を話したところ、この瞬間だけ突然、正気に戻って、「なぜ、この母親より先に死んでしまったんだ」と言って、オイオイ泣いたそうです。
そして、祭壇の前で大きな声で御詠歌を歌ったそうです。

その歌声に、父や姉妹、親戚一同は涙を流しました。
これまで、兄弟や親戚間には様々なわだかまりや確執がありましたが、それが一気に洗い流されたような瞬間でした。

私は、祖母から、強烈な母の愛を感じました。
息子の死に際して、母は一瞬でも正気を取り戻し、最後の力を振り絞って涙と歌を捧げたのです。

争ってはいけない、憎しみあってはいけない、家族は一つにならなければいけない。
夫婦の分断、親子の分断、兄弟姉妹の分断、親族、知人友人の分断があってはならない。
愛によって和合しなければならない。
そう先祖から願われているような気持ちになりました。