黒澤明の「生きる」を見る - コラム - 専門家プロファイル

高安 重一
有限会社アーキテクチャー・ラボ 代表取締役
東京都
建築家

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閲覧数順 2024年04月18日更新

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黒澤明の「生きる」を見る

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「羅生門」に続いて、古いものから見直そうと「生きる」(黒澤明)を見る。

昭和27年の映画。先日見た「東京物語」より一年早い公開で、
親を煙たがるところなどは時代の共通認識が見られて面白い。

小津安二郎も良いのだろうけれど、個人的には黒澤明の実験的なところがやはり好き。

大胆な2部構成は展開の妙だし、後半の葬式のシーンは各人の回想と語りが「羅生門」にも通じる。
最後の仕事の「まあだだよ」なんかも思い出させる。

それとリドリー・スコットは光の監督だと思っていたけど、
黒塗りの車に映る街のネオンなんかを見ると、こちらがすでに行っていた事が分かる。

クラブで演奏するピアニストを天井の鏡を通して手元だけ見せるところも印象的だし、
主人公が夕焼けに感動する逆光のシーンもいい。

劇中で主人公の課長が、
役所をつまらないと辞めた女性(その後ウサギの人形を作っている町工場で働いている)に
「なぜそんなに生き生きしているのか?」という問に、
「こんなもんでも作っていると楽しいよ。世の中の子供がみんな自分の子のように思えて・・。課長さんも何か作ってみたら?もう遅いか・・。」と言うようなシーンがある。
そこはレストランで背景では誰かの誕生日で「ハッピー・バースデー・トゥ・ユー」と合唱が始まるんだけど、
これが課長の生まれ変わる瞬間で、一つの頂点を迎える。

我々の仕事も常に幸せだと思えるのは、とにかく作っていること。
作り続けるのが仕事だから死ぬまでやってられる。
「生きる」は黒澤明の42才の仕事と言うことで、僕の今の年と同じ。
自分と比べて圧倒的な仕事に目が覚める。

「東京物語」同様、やはり子供の頃よく見ていた、
浦辺粂子、千秋実、菅井きん、金子信雄、左卜全に会えたのも楽しめた。