母からの卒業試験

こんにちは！
高窪です。

お料理が好き、という方がたくさんいらっしゃる反面、食べることは好きだけどお料理は苦手、という方やお料理なんてしたくない!!　という方もたくさんいらっしゃる･･･。

生徒の方とお話していると、いろいろなことを思い出します。
そこで、今日は私に料理を仕込んでくれた母との思い出を少しだけ。
しばらく、お付き合いくださいね。

そもそも、お料理をすることが好きになったのはごく小さな頃。
乗せ方のうまい母のおかげで、5歳には泥団子ならぬ肉団子を丸めるお手伝いを褒められたことがきっかけだったなぁ、と思います。

もちろん最初から上手だったはずもなく、忘れもしない小学校2年生のとき、過労で倒れ絶対安静だった母の代わりにと、2時間もかけて必死に大根と人参の皮をむき、きざんで作ったお味噌汁のことは、忘れられません。

それから少しずつお手伝いをして、小学校の家庭科の調理実習で本当に楽しくなって･･･。
あの頃から、自宅にあったお料理本を時間があれば眺めるのが大好きでした。

図書館の司書になるか、お菓子や料理に関わる仕事がしたい！
それが高校生での夢。
ところが私はひどいアトピーで、当時の台所洗剤を使っただけで手に水泡ができ、かゆみが出て割れていくという有様。
時はバブル時代。
あまり深く考えることもなく、お菓子や料理の世界に進みたいけれど私の体調では無理だよね、とあきらめて大学受験し進学。
とはいえ、やはりお菓子やお料理が好きで好きで、友人の紹介で本屋さんの上にあるコーヒー専門店でアルバイトして。。。
でも、そのときも洗い場で洗い物を手伝うだけで手がぼろぼろに。
その当時の写真は、常に手に包帯。
でないと血だらけでしたから･･･。

中学から高校、大学にかけてはお料理よりもお菓子作りに没頭しました。
もちろんお料理も作っていましたが、実家のキッチンは母のキッチンで、私はお手伝いの位置づけ。
その点、お菓子は自分が主役になれるということで、それこそ毎週のように作り、大学時代にはアルバイトをして道具を買い揃え、とうとう友人のウェディングケーキまで焼くように。
そんな中でも、母の代わりに食事をつくる機会は少しずつ増えていきました。

そうやってやがて就職し、その後実家から旅立つ日が近づいたある日。
母が出かけるから夕食の準備をしておいて、と言い置いて外出しました。
冷蔵庫の中にあるものを見て献立を組み立て、準備して･･･。
帰宅した母が食卓を見て「あなたに教えることは、なにもないわね」と一言。
この夕食準備が、母から私に出た卒業試験だったのです。

そして、独立して自分の台所を持って･･･。
野菜を切る音が、母のリズミカルな音とは全く違うリズムだったのがショックで、必死に毎日練習したことを20年近く経った今、懐かしく思い出します。

私がお料理をし続けるのは、食いしん坊であることももちろんですが、その出来上がったお料理を食べてくれた人の笑顔を見るのが、何よりも好きだからです。
娘を産んで、過労からアトピーが再度悪化し、手を開くと深く切れて激痛が走る状態であったときも、ゴム手袋をして料理し続けました。
それは、家族に喜んで欲しいから。
食卓に集まる笑顔が、何にも変えがたい幸せであるということを信じているからです。

そんな気持ちを込めて、遅まきながら独立して始めた仕事。
歩みは遅くても、この気持ちを忘れずに日々感謝して、進んでいきたいと思います。