中国特許権侵害訴訟の傾向と分析(第14回) - 特許 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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中国特許権侵害訴訟の傾向と分析(第14回)

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中国特許権侵害訴訟の傾向と分析

〜中国企業に狙われる外国企業〜(第14回) 
河野特許事務所 2010年7月1日 河野 英仁


 図13 装置のハードウェア構成を示すブロック図

 セルラーコードレス電話機10 は,コードレス基地局180,セルラー基地局190 及びセルラー制御端末196 により動作する。図13 に示す如く,セルラーコードレス電話機(CCT)100 はセルラー電話送受信機
120,アンテナ128,キーボード140,ディスプレイ180,ハンドセット160,及び,マイクロコンピュータ130,さらに,コードレス送受信機110 及びアンテナ118 を備える。これら全ては一つのハウジング内に収容される。
 CCT100 はセルラー電話機及びコードレス電話機として同時に動作する。セルラー電話機として動作する
場合, マイクロコンピュータ130 の制御信号TXENABLE131 及びRX ENABLE132 は,それぞれ,セルラー送信機124 及びセルラー受信機122 を動作可能とする。コードレス電話機として動作する場合,マイクロコンピュータ130 の制御信号141 及び146 は,それぞれコードレス受信機112 及びコードレス送信機
114 を動作可能とする。
 音声スイッチ150 は,2 対1 多重アナログ・スイッチ151 ~ 155 で実行することが可能であり,これらは,マイクロコンピュータ130 からの選択信号SELECT1,SELECT2 及びLINK に制御され,コードレス電話送受信機110 中の音声回路116 及びセルラー電話送受信機120 中の音声回路126 の音声信号を切り替える。
 図14 は他の実施形態を示すブロック図である。

 図14 他の実施形態を示すブロック図

 図14 に示す如く,コードレス電話送受信機210 とセルラー電話送受信機220 とは白抜き矢印で示す連接器を通じて接続されており,コードレス電話送受信機210 をセルラー電話送受信機220 から取り外すことができる点開示されている。
 以上の開示において復審委員会は同様に引用文献2には,技術特徴1-2,1-4 及び1-5 が開示されていないと判断した。引用文献2 の音声スイッチ150 は音声信号をモードに応じて切り替えるものの,技術特徴1-4及び1-5 等に記載されたアンテナ切り替えスイッチ等は記載されていない。さらに,請求項1 に係る連接器は,主CPU5 と補助通信モジュール3 とを連接する点で,連接器がコードレス電話送受信機210 とセルラー電話送受信機220 とを連接するに過ぎない引用文献2とは相違する。
 (v)復審委員会は,引用文献1 及び2 には,請求項1 に係る発明に至る啓示(動機付け)も開示されて
いないと判断した。さらに引用文献1 及び2 を組み合わせたとしても,上述した2 つの効果を奏さないこと
から,請求項1 に係る発明は,引用文献1 及び2 に対し,突出した実質的特徴及び顕著な進歩を有し,専利法第22 条第3 項の要件を満たすと判断した。
 (vi)復審委員会の創造性有りとする判断は妥当であり,日本または米国においても同様に進歩性有り,または,非自明と判断されると考える。モード選択画面を提示し,ユーザに選択させる点及びモード選択後の各ハードウェアに対する制御は,引用文献1 及び2に全く開示されていないからである。復審委員会は,創造性の判断を審査指南第2 部分第四章の規定に従いセオリーどおり判断している。新たに有力な先行技術が存在しない限り北京中級人民法院へ上訴しても特許維持の決定を覆すことは極めて困難と思われる。本事件は携帯電話機の特許権侵害事件としては過去最高の損害賠償金の支払いが命じられていること,また韓国企業が中国企業に訴えられたことから大きな注目を集めた。原告のコメントによれば本事件で認められた損
害賠償金はあくまで一部に過ぎないとのことである。被告は2007 年の訴訟提起以降も携帯電話機を継続し
て販売していることから,さらに損害賠償額が増加する可能性がある。韓国連合通信社がソウル官吏(匿名)
から入手した情報によれば,被告は高級人民法院へ上訴した模様である。
 

(第15回に続く)  

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