角界と野球賭博 - 労働問題・仕事の法律全般 - 専門家プロファイル

今林 浩一郎
今林国際法務行政書士事務所 代表者
東京都
行政書士
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最近はテレビでも新聞でも頻繁に角界の野球賭博のことが報道されています。確かに賭博は犯罪です(刑法185条)。ここで「賭博」とは「当事者の任意に左右し得ない偶然の事情にかかる勝敗によって財物の得喪を争うこと」と定義されます。「賭博」が犯罪とされるのは、勤労によって財産を取得するという国民の健全な経済的風俗を守るためです(通説・判例)。

確かに野球の勝敗はチームの実力や今シーズンの状態によって予測できる面もあり、100%偶然に支配される訳でもありません。しかしながら、事前にどのチームが勝敗するかを確実に予測できない点で偶然の事情にかかる勝敗であり、賭博の対象となる訳です。もっとも、世界には賭博を犯罪としていない国も多数あり、賭博が犯罪視されるのは日本の社会的風土に拠るものといえます。たとえば、アメリカのラスベガスや中国のマカオ等のカジノも合法的な賭博場です。また、海外旅行中の日本人がカジノで賭博をしても国内では処罰されません。日本国内で賭博行為が行われた場合にのみ賭博罪として処罰されるのです。

ところで、「一時の享楽に供する物」を賭けても賭博罪にはならないと刑法自体が規定しています。ただし、金銭を賭けることはたとえ少額でも原則的に賭博罪になります(判例)。ところが、リーチ麻雀やパチンコ等では事実上金銭を賭けることが行われており、警察もレートが高額にならない限り見逃しているのが現状です(厳密に言えば、違法であることには変わりありません)。

では、なぜ角界の野球賭博に世間があれほど大騒ぎするのでしょうか?それは通常野球賭博を暴力団が取り仕切っており、暴力団の資金源となっているからです。すなわち、野球賭博への関与が重大視されるのは、単に野球賭博が違法行為であるというだけではなく、野球賭博は反社会的組織との繋がりを意味しているからです。

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