『相続放棄』と『遺留分の放棄』 その1 - 遺産相続全般 - 専門家プロファイル

小林 彰
司法書士事務所 ワン・プラス・ワン 代表司法書士
東京都
司法書士

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対象:遺産相続

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『相続放棄』と『遺留分の放棄』 その1

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ハッピー相続を考える(遺産相続・相続人・相続放棄) 相続の『放棄』の手続き

『相続放棄』と『遺留分の放棄』とは

 

たとえば、事業を営んでいた親が突然亡くなり、莫大な借金が子どもに残されたとします。子供は突然の出来事に途方に暮れてしまいます。こういったときのため民法は『相続放棄』という手続きを準備しています。この制度のおかげで地獄から脱することができた人が大勢いるわけです。


相続で「放棄」というと大抵の場合、『相続放棄』を連想しますが、もうひとつ裁判所の関与する『遺留分の放棄』という手続きがあります。ちなみに遺留分制度の概要は以下のとおりです。

-遺留分制度(民法1028条以下)-

遺留分制度は、被相続人が有していた財産について、その一定割合の承継を一定の法定相続人に保証するもので、被相続人が一部の相続人に全財産を相続させる遺言を残した場合などに遺産をもらえなくなった相続人を保護することを目的とします。

遺留分権利者(遺留分を有する相続人)は、被相続人の配偶者、子、直系尊属であり、子の代襲相続人も、被代襲者である子と同じ遺留分をもちます。総体的な遺留分の割合は、

1) 直系尊属のみが相続人   被相続人の財産の1/3

2) 1)以外の場合         被相続人の財産の1/2

個別の遺留分は、この総体的な割合に法定相続分の割合を乗じて算出します。

遺留分に反する譲渡行為であってもそのため当然無効となるものではなく減殺請求に服するにすぎません。また、遺留分を有することと遺留分権を行使するということは別問題です。

『相続放棄』と『遺留分の放棄』のふたつを比べてみます。

『相続放棄』 (民法938条以下)

相続の放棄とは、相続人が相続開始による包括承継の効果を全面的に拒否する意思表示であり、放棄する相続人は、自己のために相続が開始したことを知ったときから3か月以内に、家庭裁判所にその旨の申述をしなければならない。放棄した相続人は、その相続では最初から相続人でなかったものとして扱われます。

『遺留分の放棄』(民法1043条)

遺留分権利者は、相続開始前に、家庭裁判所の許可を得て遺留分を放棄することができます。

遺留分の放棄は『相続の放棄』ではないので、相続開始後は相続人となることに変わりはありません。また、ある遺留分権利者が遺留分を放棄したからといって、ほかの共同相続人の相続分が増加するわけでもありません。ちなみに相続開始後は、家庭裁判所の許可なしに自由に遺留分を放棄することができます。

このふたつの放棄の一番の違いは、相続開始『前』に放棄ができるかできないかということです。

 

(つづく)

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