その顕著な例が長寿県として知られた沖縄です。戦後の1970年代あたりから働き盛りである40〜50台男性の病死が急増したのです。100歳になる祖父が50歳の孫の葬式を出す、などという「逆縁」が日常茶飯事となりました。その結果男性の平均寿命は一時期、全国1位から29位まで急降下しました。
沖縄男性の死亡率が急増した最大の原因はライフスタイルの急激な変化と言われています。沖縄は戦後、日本本土以上に米国の影響を受け、ハンバーガーにポテトチップス、フライドチキン、コカコーラといったアメリカ風の食生活が浸透し、自動車も急速に普及したため、生活習慣病が急速に増加したのです。
沖縄ほどドラマティックでなくとも、戦後の日本では糖尿病、高血圧、脂質異常症、痛風などの生活習慣病が急増しています。糖尿病は予備軍まで含めると、成人のおよそ5人に1人が該当すると指摘されています。それだけでなく、近年は各種がんやアレルギー性の疾患、うつ病などの各種精神疾患も急増しています。
これといった病気にかかっていない人の場合にも、健康的でエネルギッシュな日々を送っているかというと、必ずしもそうではありません。何となくだるい、体が重い、夜眠れない、体が冷える、肩凝りや腰痛がひどい、とにかくイライラする・・などといった不定愁訴を訴える方がとても増えています。まさに「1億総半病人」という状況になりつつあるのです。
それではいけないということで、一昨年あたりから厚労省が音頭をとる形で、いわゆるメタボ健診、正確には特定健診および特定保健指導がスタートしました。これは肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの「生活習慣病」を克服しよう、と謳われて始まった取り組みです。実効性はともかく、国までが本腰を入れ始めたのです。
また街のスポーツクラブでは、メタボ対策と称した運動プログラムや健康グッズが用意され、関心の高い個人ばかりではなく、企業でも法人契約を通してスポーツクラブの利用が増加しています。施設の数は全国的にウナギのぼりで、しかも多くは繁盛しています。世は正に「メタボ特需」と言わんばかりです・・(続く)
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このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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