KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(6)第4回 - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(6)第4回

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   米国特許判例紹介:KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(6)
      〜公知要素の組み合わせとMPFクレーム〜(第4回) 
   河野特許事務所 2010年1月15日 執筆者:弁理士  河野 英仁

                Fresenius USA, Inc., et al.,
              Plaintiffs- Appellants,
                 v.
               Baxter International., Inc., et al.,
               Defendants-Cross Appellants.


争点2:組み合わせにより自明といえるか-MPFクレーム形式 

434特許のクレーム26が自明か否か問題となった。
434特許のクレーム26*6は以下のとおりである。
26.血液透析装置であり以下を含む、
(a)透析液温度及び透析液濃度からなる群から選択される1以上の透析液パラメータを制御する手段、及び、血液透析器の透析液分室へ透析液を送出する手段
(b)前記透析液送出手段に操作可能に接続されたユーザ/装置インターフェースを備え、該ユーザ/装置インターフェースは以下を含む
 血液透析を実行する前記血液透析装置の操作に関するパラメータに対応する印を表示するために適用され、また、印にタッチすることによりユーザにパラメータの変化を起こさせるタッチスクリーン。

 クレーム26はMPFクレーム形式で記載されている。MPFクレームに関する根拠条文は米国特許法第112条パラグラフ6である。米国特許法第112条パラグラフ6は、以下のとおり規定している。

「組合せに係るクレームの要素は,その構造,材料又はそれを支える作用を詳述することなく,特定の機能を遂行するための手段又は工程として記載することができ,当該クレームは,明細書に記載された対応する構造,材料又は作用,及びそれらの均等物を対象としていると解釈されるものとする。」*7

 MPFクレームは、”means for 〜ing(〜する手段)”と表現される。日本の実務においては「手段」の記載が多用されており、米国で権利化する場合もMPFクレームを用いることができる。ただし、米国特許法第112条パラグラフ6後段に規定のとおり、機能的な記載を認める代償として、その権利範囲は、明細書中に記載された対応する構造,材料又は作用,及びそれらの均等物と解釈される。

 そして、当業者がMPFクレームに対応する構造を明細書中で認識できない場合、及び、クレームにおける機能に関し構造と結びつけることができない場合、不明確とされる*8(米国特許法第112条パラグラフ2)。

 本事件では先行技術中にMPFクレームで記載された構成要件(a)に対応する事項が開示されているか、またタッチスクリーンを組み合わせることが、自明か否かが問題となった。
                                   (第5回へ続く)

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