中小零細企業 × M&A 【17】 - 独立開業全般 - 専門家プロファイル

後藤 義弘
代表取締役
社会保険労務士

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対象:独立開業

尾崎 友俐
尾崎 友俐
(経営コンサルタント)

閲覧数順 2024年04月23日更新

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中小零細企業 × M&A 【17】

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ビジネスモデル事例 M&A (組織再編)
【相違点4 〜従業員の移籍問題〜】

事業譲渡・会社分割の行う際、お話してきた債権・債務(資産・負債)の移転に加え従業員の移籍問題についても考慮が必要です。 会社と従業員との労働契約についても債権・債務の関係が存在することから、その移転に際して一定のルールを踏まえた手続きを経なければなりません。 A社の例でいくと、譲渡・分割されるX店在籍の従業員のY社への移籍問題です。

 (1)事業譲渡 / 民法625条

X店は他社への売却によりA社の手から完全に離れます。 よって従業員側から見ると他社への 転職 にあたり、A社の経営上の都合により本人の意思に反し不利な転職が強制される弊害が生じます。 この不利益を防止するために事業譲渡では通常の債務の移転同様従業員の ''同意'' を必要としています。 (民法625-1)  この同意に加え、さらに売却先であるY社の受入意思の確認も必要になります。 したがって従業員の雇用の引継ぎについては

  [1] 従業員 
  [2] 譲渡先会社

2つの「同意」が必要です。 そしてこのどちらかが欠けても移籍は成立せず、結果従来通りA社に「残留」ということになります。 本人の同意、そして先方の受入れ態勢があってはじめて移籍が成立することになります。

このように3者間の意思確認が必要であることで、逆に労働条件の切り下げを条件にし特定従業員の排除を目的とし、事業再編スキームに事業譲渡を使うケースが見受けられます。 そして行き場を失った従業員により数多くの訴訟が提起されていますが、こうした脱法目的と認められる再編行為に対し裁判所は概ね雇用を保護するスタンスに立っています。
 
 (2)会社分割 / 労働契約承継法

会社分割の場合も同じく民法の原則に照らすと上のように当事者[1][2]の同意が必要となりそうですが、「労働契約承継法」という法律でその原則は修正されています。