第1章 幼稚園児は青信号で横断したのか? - 民事事件 - 専門家プロファイル

羽柴 駿
番町法律事務所 
東京都
弁護士

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対象:民事家事・生活トラブル

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第1章 幼稚園児は青信号で横断したのか?

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連載「刑事法廷」
第4回

目撃者Hさんは、事故直前に、F運転手が西から東へ走る幹線道路の西側横断歩道を北から南に渡るために信号待ちしていました。Hさんは次のように警察に対して供述していました。

「信号待ちをしていると、一台の大きなトラックが目の前を右から左(西から東)へ通り過ぎてゆき、それから1秒くらいして対面の歩行者用信号が青に変わったので渡り始めた。青に変わったとき、右を見ると遠くに大型車が走ってくるのを見たが、当然止まると思った。横断して対面の歩道にあがったとき後ろで荷物が落ちるような音がしたので振り返った。すると、ダンプが止まっていて、子どもが倒れていた。事故の原因はダンプの信号無視と思う。」
Hさんの供述は、信号が青に変わってHさんが渡った後にダンプカーが突っ込んできて事故を起こしたことを推測させる内容になっています。

しかし、警察・検察の考えたとおりF運転手のダンプカーが交差点手前50メートル以上にいた時点で対面信号が黄色に変わっていたとすると、時速40キロで走行しているダンプカーは歩行者用信号が青に変わったときに丁度停止線にさしかかります。そうすると、歩行者用信号が青になってすぐに渡り始めたHさんはダンプカーにぶつかりそうになっているはずです。ところがそのようなことがあったという供述はありません。

そこで、私は警察・検察の考えるのとは異なり、歩行者用信号が青に変わる1秒前にHさんの前を通過したトラックがF運転手のダンプカーである可能性があると考えました。もしそうだとするならば、Hさんの供述から必然的に子ども達は歩行者信号が赤のうちに走り出した、ということになります。

                  (次回に続く)