- 野平 史彦
- 株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
- 千葉県
- 建築家
対象:住宅設計・構造
コストに関して言えば、やはりグラスウールの方が安価であるため北海道等の寒冷地では内断熱が多いのですが、東京辺りでは材料そのものの値段以上に、内断熱の複雑さや、工法修得のための職人教育を含めた人件費の面から内断熱は敬遠される傾向にあり、近年の外断熱の流行は主にこうした施工者側の事情が反映されていると言っていいでしょう。
事実、私の経験からも、内断熱の施工実績のない工務店に内断熱の仕様を理解してもらうのは大変なことで、それだけ大変な思いをしながら巧くいかないことが実は多いのです。
実際に、いつも内断熱による高気密・高断熱をやっている、という工務店の現場を見せてもらったことがありますが、部屋内側の防湿シートの施工に当たっては構造体を組み上げる時に「先張りシート」を施工する、という認識はまるでなく、電気屋さんが壁にコンセントを付けるために防湿シートを破っても気密テープで塞ぐこともしていません。
これは気密の意味を全く理解していない例で、先に述べた中気密・高断熱住宅を造っているに等しく、後で壁内結露を起こして大変なクレームがでるのではないかと呆れてしまいました。
しかし、日本で行われている断熱工法の殆どがグラスウールなどの繊維系断熱材による内断熱であり、さらにその殆どが「防湿シート」を施工していない中気密・中断熱住宅であり、あとのほんの僅かでしかない高気密・高断熱住宅と呼ばれているものの殆どが実はこのような危険な中気密・高断熱状態にあるのです。
このように内断熱工法は高気密・高断熱の意味を良く理解できている施工者でなければ難しい工法ですが、逆に言えば内断熱工法がきちんとできることが高気密・高断熱住宅を造る施工者の基本中の基本であると言えるのです。