- 河野 英仁
- 河野特許事務所 弁理士
- 弁理士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
- 河野 英仁
- (弁理士)
〜KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(5)〜(第1回)
河野特許事務所 2009年8月18日 執筆者:弁理士 河野 英仁
Depuy Spine, Inc., et al.,
Plaintiff-Cross Appellant,
v.
Medtronic Sofamor Danek, Inc., et al.,
Defendants-Appellants.
1.概要
イ号製品が文言上侵害とならない場合、特許権者は均等論による侵害を主張する。米国においては、クレームされた発明とイ号製品との相違が非本質的である場合に均等と判断される*1。
特許権者が均等論侵害の主張に成功したとしても、被告による陥れ防御(Ensnarement Defense)に注意しなければならない。陥れ防御とは、被告側が、均等と判断されたイ号製品を規定する仮想クレームが、先行技術に陥ると主張することにより、特許権の非侵害を主張することをいう*2。
図1は陥れ防御の概念を示す説明図である。クレームの文言範囲を実線で、均等の範囲を点線で示す。
図1 陥れ防御の概念を示す説明図
例えば、図1Aで示す如く、イ号製品(図1A参照)が、点線で示す均等論上の侵害であると裁判所が判断したとする。図1Bで示す如く均等物は同じく点線で示す仮想クレームにより規定される。ここで、仮想クレームに特許性がないと判断された場合、具体的には先行技術1及び先行技術2の組み合わせにより自明(米国特許法第103条*3)と判断される場合、もはや特許権侵害は成立しない。
本事件においては、均等侵害と判断された被告が、均等物であるイ号製品は複数の先行技術の組み合わせにより自明であり、特許権侵害は成立しないと主張した。CAFCはKSR最高裁判決*4にて示された基準に従い、クレームされた発明は自明でないと判断し、被告の陥れ防御を退けた。
(第2回へ続く)
ソフトウェア特許に関するご相談は河野特許事務所まで