低周波症候群について
100ヘルツより低い周波数の音を低周波といいます。この低周波による雑音で、さまざまな身体的な苦痛や不快感を感じると訴えるケースを「低周波症候群」といいます。
低周波による騒音被害は、1970年代からすでに報告されていていますが、いまだ「低周波症候群」自体は病気として認知が広まっていません。そのため、病院にかかられても自律神経失調、うつ病など異なる診断を受けることが多いようです。
低周波症候群の主な症状は、頭痛、頭重感、圧迫感、めまい、不眠などですが、人によって多種多様な症状を訴えることがあります。
原因となる低周波音源は、工場や工事現場の重機、排気ダクト、変圧器などがありますが、最近ではエコキュートのような家庭機器からもでることが知られています。
東洋医学で低周波症候群を考える
実際には、低周波音にさらされたすべての人が症状を訴えるわけではないので、そこに音に対する個人の感受性の差が存在することがうかがえます。その差を生む要因をつかめれば、低周波症候群を改善する糸口が見つかると考えられます。
東洋医学では、耳の働きは「腎」が司るとしています。強い音にさらされ続けると、腎の働きに異常をきたします。もともと腎が弱い人が低周波を受けると、腎の働きがさらに弱まってしまいます。腎が弱まると、頭重や頭痛、めまい、不眠といった症状が現れます。これはまさに低周波症候群の特徴的な症状でもあります。
また低周波音の特徴として、それを聞く人に不安や恐怖感を感じさせることがあります。なぜなら、もともと自然界に存在する低周波音源が、強風による風鳴り、地鳴りなど、自然災害がおこるような状況で発生するもので、人は本能的にそうした音を聞いたときに不安や恐怖を感じることで警戒するような仕組みを持っているからです。
大脳生理学的に考えると、音は聴神経から視床を介して聴覚野、そして聴覚連合野に伝えるルートと、視床や眼窩面前頭葉から扁桃体、海馬といった大脳辺縁系に伝わるルートがあります。前者は、音を認知し分析するもので、後者は快不快などの情動を引き起こし、記憶しておく回路です。
低周波が前述のように本能的な恐怖心を引き起こすのは、大脳辺縁系が関与していると考えられます。これによって、危険な状況から逃避する行動を取りたくなるというわけです。しかし、生活環境からの騒音からは逃げることができません。そうなると、常に心理的な恐怖を感じながらの生活を強いられることになります。
東洋医学では、恐怖は腎を傷めるとしています。この点でも、腎と低周波症候群の関係がうかがえます。
低周波症候群への対応策
そこで、鍼灸や漢方を使って弱っている腎の働きを助け、強化することができれば、低周波を受けても身体が対応できるようになるのではと考えられます。効果は、聴力や平衡感覚といった耳本来の働き、音の表現、低周波で生じる感覚表現、現在の症状の強さ、瞳孔の大きさ、盲点の大きさなどを調べて確認していきます。
ウイケアでは、低周波症候群のように現代医療でカバーしきれない病態に対してアプローチし、悩みを抱えている患者さんを1人でも多く手助けできたらと、東洋の伝統的な英知と現代の知識を融合したケアの方法を考え続けています。
吉川祐介 Wecareカイロプラクティック&ナチュラルケア