- 尾上 雅典
- 行政書士エース環境法務事務所
- 大阪府
- 行政書士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
- 河野 英仁
- (弁理士)
公共関与による最終処分場設置の是非
(第1回目)廃棄物処理施設設置許可制度の整備及び最終処分場対策の整備
(第2回目)安定型最終処分場への規制が強化される可能性
(第3回目)最終処分場維持管理積立金のあり方
の続きです。
中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会 廃棄物処理制度専門員会において、「廃棄物処理施設設置許可制度の整備及び最終処分場対策の整備」に関して、以下の3点が問題提起されました。
・安定型最終処分場への住民不安に配慮し、異物を付着・混入させないよう、より充実した環境保全措置が必要ではないか
・最終処分場の設置者が不在となった場合、どうやって管理を継続していくのかを含め、最終処分場の維持管理体制の強化が必要ではないか
・公共関与をしてでも、廃棄物最終処分場の施設整備を進めることが必要ではないか
今回のコラムでは、「公共関与による最終処分場設置の是非」について解説します。
他のコラムでも解説してきたとおり、現在は最終処分場に対する社会の目が大変厳しい状況です。
最終処分場は、忌避される存在でありながら、社会にとって必要不可欠な施設でもあるため、廃棄物処理を続けるためにはどこかに存在していなくてはなりません。
地域によっては、自区内に最終処分場がないため、遠くの他の地域にある最終処分場に依存するしかないところもあります。
最終処分場がないということは、廃棄物の行き場がなくなるということであり、それだけ不法投棄等の廃棄物の不適切な処理が発生しやすくなります。
また、都市部で発生させた廃棄物を、地方の最終処分場に日々搬入し続けるということは、同じ日本に暮しながら、地方のみに廃棄物処理の負担を押し付けていることに他なりません。
これらの理由により、公共(行政)が関与してでも、自区内に最終処分場を設置しようという動きが年々強まっています。
最近では、山梨県で、公共関与による最終処分場が設置されたところです(供用開始は平成21年度から)。
財団法人山梨県環境整備事業団
山梨県の場合は、立地調査から供用開始までに15年間を要しています。
公共が関与した場合でも、これだけ長期間の地元調整が必要なのが現実です。
最終処分場は社会にとって必要不可欠な施設ですので、民間が設置できない場合は、公共機関が設置に乗り出すことも必要です。
ただ、公共主体で設置する場合は、地元の信頼を得るために、民間企業以上に情報公開を徹底し、設置者にとって不都合な情報もすべて開示することが求められています。
「社会にとって必要な施設だから、なにがあっても設置する」と、強硬手段に訴えるのではなく、地元の懸念に真摯に応えていくことが重要です。
これから、公共関与による最終処分場の設置はますます増えていくものと思われます。
リスクコミュニケーションは、当事者間の正確な情報共有によってしか成し遂げられません。
行政側には、情報開示面で誠実な姿勢を示していただきたいものです。
運営サイト 産業廃棄物許可コンサルティングセンター
著書 「最新産廃処理の基本と仕組みがよ〜くわかる本」