有姿除却による不正経理で重加算税 - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士
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有姿除却による不正経理で重加算税

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雑感 業務その他
実際には廃棄していない在庫を廃棄したものとして除却損を計上し、
所得を圧縮したとして、東芝が追徴課税を受けたという。
2日15時1分asahi.com記事はこう報じた。

電機大手の東芝と子会社が東京・関東信越の両国税局の税務調査を受け、
約11億円の所得隠しを指摘されたことが分かった。
重加算税を含む追徴税額は約4億5千万円。
医療機器などの在庫を隠して損失を過大に計上、所得を圧縮したなどと
指摘された模様だ。
東芝は「当局の指摘に従い適切に対処します」などとコメントしている。
東芝の説明などによると、所得隠しの対象となったのは、医療機器製造・
東芝メディカルシステムズ(栃木県大田原市)が製造したCT装置や
X線装置などの医療機器や関連部品の在庫処理。
同社は、余剰部品などの在庫はその都度、廃棄していた。
しかし、一部は通常使っていない東芝関連会社の倉庫に保管したまま、
帳簿上は廃棄したと偽り、決算期末に「棚卸し資産」として計上して
いなかったという。
在庫を廃棄すれば損失が計上されることになるため、同社は08年3月期
だけで約11億円分の所得を圧縮したことになり、重加算税の対象と
指摘されたという。
東芝は「担当部門は将来的に部品が足りなくなることを恐れ、廃棄の
タイミングを逸して保管したままだった」などと説明している。
一方、同社社員は「医療機器は高価なのにもかかわらず、緊急性を要する
という理由から、在庫を多めに用意する必要がある。
販売されるまでずっと保管せざるを得ないこともあり、負担が大きい」
などと背景事情を語る。


子会社による不正経理が連結納税を選択しているためにグループ全体の
申告に影響を与えた事件である。
余剰在庫をその都度廃棄扱いとして会計処理をしていたという不正経理
であるが、残念なのは、税務調査によって発覚したということである。
東芝のような上場企業は公認会計士監査を受けているわけで、公認会計士が
適正意見を表明した決算書に不正が見つかったということは、公認会計士
監査の信頼性を揺らがしかねない。
子会社の監査が甘かったということであろうが、連結主体の財務報告の時代に
子会社だからというのは甘えでしかないだろう。

子会社の社員のコメントから考えても、子会社倉庫への立会実査を行えば、
高価な在庫が大量に残っていることを確認できていたと容易に予想できる。

廃棄ではないけれども、経費にしたいというのであれば、陳腐化や
品質劣化のケースであれば、不可能ではない。
しかし、それは商品価値がなくなっていることを意味するわけで、
利益を隠すための不正経理であるとされるのは当然のコトであろう。

それとも、在庫を大量に抱えて、期末棚卸高が大きくなることを恐れた
のであろうか。
なんのために?

親会社から意図的に指示されたとは思えず、子会社が親にいい顔をしたくて
親に隠していたのであれば、公認会計士監査で指摘できなかったことは
プロフェッショナルの仕事をしていたと言えるのだろうか?

結果として、重加算税という高い授業料を支払わされたことになろう。
実に残念な事件である。