
- 尾上 雅典
- 行政書士エース環境法務事務所
- 大阪府
- 行政書士
対象:企業法務
- 村田 英幸
- (弁護士)
- 尾上 雅典
- (行政書士)
廃棄物処理業の許可制度の整備と優良化の推進(第4回目)
※関連記事
(第1回目)廃棄物処理業の許可制度の整備と優良化の推進
(第2回目)「経理的基礎」ってなに?
(第3回目)行政監視の動向とその影響について
(第5回目)実現するか?収集運搬業許可手続の簡素化
(第6回目)優良性評価制度とは
(第7回目)廃棄物処理業の許可制度の整備と優良化の推進
中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会 廃棄物処理制度専門員会において、「廃棄物処理業の許可制度の整備と優良化の推進」に関して検討されているポイントは以下の4点です。
・「経理的基礎」などの許可基準を明確にするべき
・行政は不適正処理への取締りをもっと徹底するべき
・欠格要件の見直しや、産業廃棄物収集運搬業許可手続の簡素化等、一定の合理化をするべき
・信頼できる産業廃棄物処理業者を育成する観点から、優良性評価制度を拡充していくべき
今回のコラムでは、「欠格要件の見直し」について解説します。
欠格要件とは
廃棄物処理法では、産業廃棄物処理業を営んではいけない人・企業の条件が定められています。
その業を営むことができない条件のことを「欠格要件」と言います。
※欠格要件の詳細は、下記のサイトでご覧ください
許可の取り方「欠格要件にご注意を!」
欠格要件の一例としては、「暴力団員が経営者にいないこと」や「経営者が過去5年以内に、禁錮刑以上の刑罰に処せられていないこと」などがあります。
欠格要件の大部分は、暴力団などの反社会勢力を廃棄物処理業から排除するために定められたものです。
欠格要件の存在により、反社会勢力が廃棄物処理業を営むことはできなくなりましたので、廃棄物処理業界の産業化が進んだのも事実です。
しかしながら、廃棄物処理法の場合は、他の国内法とは違い、「欠格要件に該当した人・企業の許可は『取消さなければならない』」という、裁量を許さない運用方針が定められており、一度欠格要件に該当した時点で、廃棄物処理事業が営めなくなってしまいます。
国内でも有数の厳しい職業要件と言っても過言ではありません。
もちろん、役員が暴力行為に及び禁錮刑以上の有罪が確定した、という場合なら、欠格要件を適用して、業の許可を取消されるのも仕方がありません。
実務では、業の許可が取消された企業の役員をしていた人は、その企業の許可が取消された時点で、「自動的に欠格者になる」という要件がよく問題になります。
ある役員の犯罪でその企業の許可が取消された結果、犯罪にまったく関与していなかったクリーンな役員まで「欠格者」として、以後5年間は廃棄物処理事業を営めなくなるのです。
現実に起こりえるケースとしては、A社とB社の両方の役員を務めているC氏がいたとします。
A社が廃棄物処理法違反をしたために、廃棄物処理業の許可を取消された場合、取消の時点でC氏は「欠格者」となり、「欠格者」が役員としているB社も許可の取消対象となってしまいます。
これを「連鎖取消」と呼び、犯罪とは無関係の人・企業にまで、欠格の烙印を押すことになる、非常に厳しいシステムです。
理屈の上では、役員の兼務状況によっては、許可の取消が延々と連鎖する可能性もあります。
添付した画像が連鎖取消しのメカニズムを示した図です。
このままでは、優良な処理企業まで連鎖取消されてしまうことになる
欠格要件、特に連鎖取消の運用を改善するべきではないか
という観点から、現在「第2次欠格要件の在り方検討会」などで、検討が進められているところです。
法律そのものが改正されるかどうかはわかりませんが、少なくとも、運用面で何らかの改善がなされる可能性は高いと考えています。
運営サイト 産業廃棄物許可コンサルティングセンター
著書 「最新産廃処理の基本と仕組みがよ〜くわかる本」