- 野平 史彦
- 株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
- 千葉県
- 建築家
対象:住宅設計・構造
高気密・高断熱住宅を語る時、その切り口は色々あり、そのいずれもが何かしらの誤解を招いているのも事実です。
特に温暖地においては家は夏の暑さを凌ぐために如何にして「開放的」にするか、という工夫を凝らしてきたのであり、それを「閉じる」ということに対しては当然、歴史的な抵抗感があります。
そのため、高気密・高断熱というだけでイコール「魔法瓶のような家」というイメージを持たれてしまったり、未だに評論家の多くが、高気密・高断熱住宅は寒冷地のための仕様であり、関東以西の高温多湿の地域には向かないと言い、高気密住宅はガス室のような危険な住宅であると相変わらず間違った認識を持っています。
しかし、こうした高気密・高断熱に対する批判の殆どは、実はとても高気密・高断熱とは呼べないエセ高気密・高断熱住宅に対するものであり、高気密・高断熱批判者に共通して言えることは、その誰もが「本当の高気密・高断熱住宅」に住んだことがないということです。
「高気密・高断熱」と言っても実は公の定義がある訳ではありません。しかし、基準としては公庫の次世代省エネ基準によってやっと我が国における公の基準ができたと見ることができます。
それまでの新省エネ基準ではまだ高気密・高断熱と呼べるレベルではなかったのです。高気密・高断熱と呼べるレベルというのは、例えばできるだけ単純に全室暖房ができる、というイメージです。それは北海道と東京では勿論違います。それぞれの気温条件に合った気密・断熱性能が必要になります。
この気密・断熱性能を表すのに熱損失係数(Q値)という数値が用いられるのですが、これは内外の温度差が1℃の時に建物から逃げる熱量を床面積で割った値で、この数値が小さいほど熱損失が少ないと言えます。
ちなみに次世代省エネ基準では北海道は1.6、東京では2.7以下に設定されています。この数値が小さいほど断熱性が高く燃費がいいということですが、同時に家の中を容易に温度差の少ない快適な環境にすることができるという指標でもあります。