- 羽柴 駿
- 番町法律事務所
- 東京都
- 弁護士
対象:刑事事件・犯罪
- 羽柴 駿
- (弁護士)
- 羽柴 駿
- (弁護士)
今までは自白強要の問題を指摘しましたが、安易に自白を「任意」になされたものと認めてしまう裁判官と司法制度の問題も見逃すわけにはゆきません。
その根本的な解決策としては、身柄を拘束した被疑者の供述(自白)はそもそも任意性に疑いがあることを原則とするべきではないでしょうか。
つまり在宅、あるいは保釈中の被疑者の供述でなければ有罪の証拠には出来ないことにするのです。もちろん、これは被疑者・被告人が自白の任意性を争っている場合のことですから、公判で自ら自白の任意性を認めるならば別です。
このようにしたからといって、自白以外には有罪の証拠がない場合はそもそも有罪にはできないのですから(憲法38条3項)、自白以外にもしっかりとした証拠があれば、たとえ被告人が公判で自白の任意性を否認して争っても有罪に出来るはずです。
4 刑事裁判の適正化
(1)裁判員裁判の可能性
従来の裁判官がともすれば自白の「任意性」を安易に承認しがちであったことに対し、市民が参加する裁判員制度は、任意性を厳格に判断する方向へと改善される契機になる可能性を有していると考えられます。
いろいろと批判もあり、確かに改善すべき点もあると思われますが、裁判員制度は大事に育ててゆくべきでしょう。
(2)証拠全面開示
また、裁判を開始するに当たり検察官の手持ち証拠全てを弁護人に開示する証拠の全面開示制度も採用されるべきでしょう。これは国際人権条約の一つである市民的および政治的権利に関する国際規約(自由権規約。日本も加入しています)の実施のために設置されている国連の自由権規約委員会が、代用監獄の廃止と並んで、繰り返し日本政府に勧告しているところでもあります。
(3)裁判官を弁護士から選ぶ
また、日本の職業裁判官は、司法試験に合格して司法修習を終えたばかりの若い時期から裁判官になり、そのまま余程のことがない限り定年まで裁判官を続けることが普通です。しかし、そのような経歴は一種の「慣れ」を生みやすく、検察官が起訴した以上は有罪になるのが当然という無意識の思いこみに陥りがちです。
そのような弊害を避けるためには、一定期間の経験を有する弁護士の中から裁判官を選ぶこと(法曹一元といい、アメリカなどで採用されている制度です)を原則とすべきでしょう。被疑者・被告人が警察でどんな扱いを受けるかを嫌というほど経験してきた弁護士であれば、安易な有罪認定に陥ることがないと期待できるからです。
(次回へ続く)