- 羽柴 駿
- 番町法律事務所
- 東京都
- 弁護士
対象:刑事事件・犯罪
- 羽柴 駿
- (弁護士)
- 羽柴 駿
- (弁護士)
取調べの全面録画だけでは十分ではありません。なぜなら、自白強要は、実は以下のような現行の捜査実務の中に深く根ざしているものだからなのです。
(1) 逮捕・勾留された被疑者は、留置場の房から取り調べ室へ呼び出された場合、拒むことが出来ない。たとえ黙秘していて、何もしゃべらないから行きたくないと言っても、強制的に引きずり出される。
(2)同じく、取調べに法律上の時間的制限がない。たとえ執務時間を過ぎて深夜になっても、取調べる側が止めない限り、被疑者は取調べ室から房へ返ることが許されない。
(3)取調べには弁護人の立ち会いが一切認められない。被疑者と弁護人との接見(面会)もせいぜい1日1回、30分程度しか許されない。
(4)勾留された被疑者が、法務省の管理する拘置所ではなく、取り調べる側の警察が管理する留置場(代用監獄)に収容され、24時間警察の管理下に置かれる。
(5)被疑者の勾留は最大20日間認められるのに、その間の保釈制度がない。警察・検察が別件逮捕・勾留を繰り返せば、事実上は何ヶ月も勾留を続け、取り調べを続けることが可能である。
これらの事実はいずれもが、取り調べをおこなう警察官による自白強要を可能にする結果を生んでいます。したがって、以下のような根本的改革を行わない限り、今後も自白強要はなくならないでしょう。
(1) 逮捕・勾留されていても、取調べに応じるかどうかは被疑者の任意とし、取調べ室に行かない自由、退室して房へ戻る自由を保障すること。
(2)取調べの時間を1日一定時間(たとえば9時間)の執務時間内に限ることとし、被疑者と弁護人が希望した場合に限り、時間の延長を許すこと。
(3)取調べへの弁護人立ち会い権を認めること。一日の接見時間は少なくとも取調べ時間と同等とすること。
(4)代用監獄を廃止すること。
(5)勾留されている被疑者の保釈制度を新設すること。
(次回へ続く)