つまり、例えば糖尿病を例に挙げる場合、糖尿病になった人をいかに治療するかに重点が置かれていたのを、糖尿病にいかにして「ならない」ようにするか、に重点が置かれるのです。言い換えると、糖尿病になってから初めて治療するのではなく、糖尿病に罹らないうちから、本当に罹ってしまわないように工夫していこう、というのです。
かと言って、病気になってしまった人の治療をないがしろにして良い、という話では決してありません。病気の治療はもちろん、今まで同様に大切です。がんの治療などは日進月歩で、これによって多くの人の命が救われてきましたし、これからもそうあるべきです。
しかしながら、これまではあまり病気の「予防」には本気で取り組んできたとはいえない、というのが医療の現実でした。予防の大切さは概念的には言われていましたが、予算や人員などの点で二の次にされがちでした。諸外国に比べても治療一辺倒の傾向があり、内外からの批判は強まるばかりです。
厚労省が重い腰を上げ、予防医療に本格的に取り組み始めた理由はいろいろ取り沙汰されていますが、近年の保険財政の逼迫が根底にあることは疑いの余地がありません。国民が高齢化するのに合わせて病気が増え、医療費の支払い負担が上昇する一方で、勤労者人口が今後減って保険料収入が逓減する見込みです。
こういう厳しい情勢では、国民一人当たりの医療費を減らす以外に方法はありません。そのためには、究極的には国民個々人に「健康」になってもらうしかないのです。国民が健康になれば病気は減り、医療費の総額も減少すると考えられます。そういう単純明快なことに、国もようやく気付いたのです。
企業の側も事情は深刻です。中高年の男性を中心としたメタボリック症候群の急増や、男女ともに増えているうつ病などの精神・神経疾患によって、企業の社員は全体的に病んでおり、企業体力を奪っています。過労死・過労自殺の増加といった悲しい現実は、訴訟リスクの増大となって企業を襲っています。
以前だと、社員の健康は社員一人ひとりの個人的な問題、と片付けられていましたが、現在は企業が責任の一旦を負う、という考えにシフトしてきています。それだけ社員の心身の健康は、企業経営の成否にとって、決定的な要素となりつつあるのです。社員の健康のためには、企業と経営者は多額の予算を組まざるを得ない情勢です。
問題は、どうすれば健康になれるかですが、それには西洋医学だけではなく、東洋医療や代替医療も大切な役割りを期待されています・・(続く)
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このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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