住宅断熱基礎講座/2-2:自然素材でも安心はできない - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

野平 史彦
株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
千葉県
建築家

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対象:住宅設計・構造

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住宅断熱基礎講座/2-2:自然素材でも安心はできない

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住宅断熱基礎講座 02.こうして不健康な「家」が生まれた
 そこで再び新建材や農薬を使わない自然素材で家づくりをしようという自然材住宅の指向が高まってきています。それ自体は歓迎されることで、ぜひ自然素材の良さを再認識してもらいたいものですが、しかし、ここで注意してもらいたいのは、自然素材だからといってVOCが全く出ないということではない、ということです。天然の木材からもわずかではありますがホルムアルデヒドが発生し、無垢のフローリングであっても気温が上がる夏場は揮発が促進されるので要注意です。植物も外敵から身を守るために必要な化学物質を造っている訳で、針葉樹などから出る天然のVOCは総称して「フィトンチッド」と呼ばれています。森林浴などによる適度のフィトンチッドの摂取は私達の健康にも有益で、室内に放散されても害にならないと考えられますが、それでもまれにこのフィトンチッドにアレルギーを持つ人もいます。このように、自然素材だからといって私達の体にとって安全だとは一概には言えないのです。  

 また、いくらVOCに配慮して家造りに取り組んだとしても、家具に使用されている接着剤や防虫剤、カーテンやカーペットに含まれる防炎剤、衣類の防虫剤やトイレの芳香剤といったように家の中に持ち込まれるものにも多量の化学物質が含まれており、そうしたものをひとつひとつ完全に排除することは極めて困難であると言えます。そして、例えそれができて化学物質過敏症が防げたとしても、それだけではもっと多くの病気や不健康を担っているカビやダニを防ぐことはできません。

 自然素材を使おうという流れが、「室内空気汚染の問題が住宅の気密化が促進されることによって起こった」として反高気密を促すものであっては、私達はやはり健康な住まいを手に入れることはできないのです。

 こうした問題は「気密化」そのものに原因がある訳ではではなく、「暖房」に原因がある訳でもありません。問題は「換気」を忘れたまま気密化への道を歩み始めたことにあるのです。この重要なポイントを保留にしたままいくら自然素材で家を建てても仕方がないのです。しかし日本の住宅は、未だにこの基本的な問題に気付かずに中途半端な、それがために最悪の生活空間を維持し続けているのです。