果物にまつわる誤解に、「果物は太る」といったものがあります。私も外来で果物をお勧めすると、「果物は血糖値が上がる・・と聞きましたが大丈夫ですか?」といった質問をよく受けます。果物は甘く、砂糖入りのお菓子のように血糖値を上昇させたり太る原因になる、という認識が根強くはびこっているようです。確かにバナナや熟れた桃などの甘い果物は、血糖値を上げてしまいそうな連想をもってしまうのでしょう。しかしそれは本当なのでしょうか?
事実は半分間違っており、半分当たっているようです。果物の糖分は「果糖」であり、砂糖(ブドウ糖)ではありません。果糖の代謝にはブドウ糖と異なり、インスリンは必要ありません。従って、エネルギー源である糖質を必要とする細胞にはインスリンとは無関係に取り込まれ、利用されます。ということは、インスリンの分泌が低下するか作用が鈍っている糖尿病患者であっても、果糖の利用には問題がないのです。つまり、果物(果糖)が太る原因になったり、血糖値が上がる心配は、基本的にはありません。
ただし、果物の食べ方には注意が必要です。一般に果物というと「食後のデザート」という印象があり、食後に食べる人がかなり多いのですが、これは正しい食べ方なのでしょうか。このように食べた場合には、例外的に血糖値が上がったり、太る原因になることがあります。それだけでなく、消化不良や胃腸のトラブルに発展することもあり得ます。前出のナチュラル・ハイジーンの考え方によると、果物の正しい食べ方は、実は食前もしくは空腹時に食べることです。中でも朝の果物は価値の高いものです。
実際にミカンの食べ方に関して「金・銀・銅」という喩えを聞いたことがあります。これは、朝は金、昼は銀、夜は銅、という意味で、朝に食べるのが最も理に適っている・・ということです。自分自身の実感でも、朝一番に食べる果物は本当に美味しいと思います。外来に来る若者に「朝ごはんを食べているか?」と聞くと「食べられない・・」といった答えが返ってきますが、「果物くらい食べられるでしょう?」と聞くと大抵は「果物ならば食べられる」と答えてきます。朝は、果物を体が求めているのです・・(続く)
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このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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