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〜均等論のFunctionと特許表示〜(第5回)
河野特許事務所 2009年6月23日
執筆者:弁理士 河野 英仁
Crown Packaging Tech., Inc., et al.,
v.
Rexam Beverage Can Co.,
(2)争点2:方法クレーム及び装置クレームが存在し、方法クレームだけを権利侵害と主張する場合に、特許表示が必要か?
特許表示は米国特有の規定である。特許物品には「patent」の表示及び対応する特許番号を付することが必要とされている。これは第3者に特許物品であることを通知することにより、未然に特許権侵害を防止せんとするものである。特許表示を怠った場合、制裁として、特許権者は侵害訴訟において損害賠償を受けることができなくなる。
ただし、特許権侵害であることを通知した後は通知後の行為については損害賠償を得ることができる。一つの製品には数多くの特許が成立しており、番号を逐次特許物品に記載することは大きな負担となるため、実務上は特許表示を行っていないケースが多い。米国特許法第287条(a)は以下のとおり規定している。
第287 条 損害賠償及びその他の救済に関する制限;特許表示及び通知
(a) 特許権者,及び特許権者のために若しくはその指示に基づいて,合衆国において特許物品を製造,販売の申出若しくは販売する者,又は特許物品を合衆国に輸入する者は,その物品に「patent」という文字若しくはその略語「pat.」を特許番号を付して貼付することによって,又は物品の性質上,そのようにすることが不可能な場合は,当該物品若しくは当該物品の1 又は2 以上が入っている包装に同様の通知を記載したラベルを付着させることによって,当該物品が特許を受けていることを公衆に通知をすることができる。そのような表示をしなかった場合は,特許権者は侵害訴訟によって損害賠償を受けることができない。ただし,侵害者が侵害について通知を受けており,その後,侵害を継続したことが証明された場合は,当該通知の後に生じた侵害に対してのみ,損害賠償を得ることができる。侵害訴訟の提起は,当該通知を構成するものとする。
米国特許法第287条(a)は特許物品について特許表示を推奨する旨を規定しており、特許方法については規定していない。方法の発明については番号の記載、または、ラベル等の添付が不可能だからである。
本事件では被告839特許は方法クレーム及び装置クレームの双方を含んでいた。被告は方法クレームのみを特許権侵害であるとして原告を訴え損害賠償を求めた。ところが、被告が使用する特許製品には特許表示がなされていなかった。このような状況下で、損害賠償が認められるか否かが争点となった。
(第6回へ続く)
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