消費税は社会保障目的税化できるのか? - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士
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消費税は社会保障目的税化できるのか?

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税制改正 平成21年度税制改正
衆議院予算委員会で15兆円の追加経済対策を盛り込んだ予算委員会が
スタートした。
麻生首相からは消費税の増税分を社会保障目的税化する提案が出てきたり、
与謝野財務相から今後の財政健全化方針が明言されたりと、初日から
積極的な主張が展開されたようだ。
時事通信社7日の記事から、10時30分記事と20時30分記事を紹介しよう。

衆院予算委員会は7日午前、麻生太郎首相と全閣僚が出席し、追加経済対策の
裏付けとなる2009年度補正予算案の実質審議に入った。
首相は、消費税率を引き上げた場合の使途について「社会保障関係(予算)の
漸増は長期的に間違いないという前提で考えなければならない」と述べ、
全額社会保障費に充てる必要性を重ねて強調した。
これに関連し、与謝野馨財務・金融・経済財政相は「一銭たりとも行政の
肥大化に使わせない。それなら国民に理解されるのではないか」との
認識を示した。
自民党の園田博之政調会長代理への答弁。
また、首相は補正予算案に関し「景気の底割れ防止、安心・安全、
活力の実現、未来の成長力強化につながる施策を織り込んでいる。
一刻も早い成立が極めて重要だ」と述べ、野党に協力を要請。
(略)自民党の町村信孝前官房長官への答弁。
(時事通信社7日10時30分記事)


与謝野馨財務・金融・経済財政相は7日午後の衆院予算委員会で、
2011年度にプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化する
政府目標について「達成は困難になりつつある。旗は相当傷んでいる」
との厳しい認識を表明した。
その上で「景気回復を最優先としつつ、財政健全化に取り組んでいる」と述べ、
新たな財政健全化目標の設定に向けて議論を加速させる考えを示した。
民主党の菅直人代表代行への答弁。
菅氏は、麻生政権が発足以来約半年で、09年度補正まで予算編成を計4回
行ったことを取り上げ、「先行きを見通した対策が遅れた結果だ。
08年度第1次補正成立後に衆院を解散していれば本格的な対応ができた」
と批判した。
麻生太郎首相は「解散しても、同じことになり得た可能性は十分ある」
と反論、景気対策上必要な措置との認識を示した。
(時事通信社7日20時30分記事)




本格的な補正予算審議が始まったが、未曾有の景気後退期に早急な審議が
できていない、と批判されても仕方がない状況である。
菅氏の指摘するところであるが、半年で4回目の予算の審議というのは、
異常事態と言わざるを得ない。
生きている経済に喫緊に対処する必要があっただけに、やむを得ない
と考えるのか、それとも、緊急対策に対する見通しの甘さが招いた
と見るべきかは、判断の分かれるところであろう。

判断の甘さがあったとしても、そんな議員しか選んでいない我々にも
責任はありますが、選挙がなければ選択できないんですね。
この状況は、政治に常日頃から関心を持たずに、難しい問題から逃げてきた
結果なので、我々自身が変わらなければ、状況は改善されませんね。

それはさておき、麻生さんは注目すべき発言をしましたね。
これを与謝野さんが否定しないということは、閣内での一致を見ている
のかもしれません。

つまり、「消費税の福祉目的税化」。

与謝野さんの政治における師匠筋に当たる中曽根元首相の首相在任時の
主張そのものですよね。
消費税導入論議の中で、中曽根さんが売上税構想を成立させるために
持ち出してきた福祉目的税構想でしたが、25年を経てようやく本格的に
日の目を見ることになりそうですね。

財政健全化のためには、行政改革を推進しながら、景気に左右されない
徴税体制を確保することが必要であるが、所得課税中心のわが国の税体系は、
景気が悪くなれば、税収が激減することは火を見るより明らかである。
だからこそ、消費税の役割が重要視されることになるのだ。

20年前の消費税選挙では、「国家100年の計のために今、消費税が必要だ」
と大阪のおばちゃんに向かって叫んだために、大敗した大物議員も
いたんですよね。
消費税の増税は、末端まで税負担を直接感じられる増税ですから、
有権者の関心も高いのですが、その結果として、将来世代、つまり
自分の子どもに自分たちが負担すべきだったはずの税負担が先送りされて
課されることは、直接的な痛みを伴わないためにピンとこないんですね。

消費税の増税を前提にはしたくありませんが、景気が悪くなれば税収が減る
一方で、景気対策のための財政出動の拡大が求められるために、財政収支が
マイナスに振れ、その負担は先送りになっている悪循環をどこかで
断ち切らなければ、少子化により元々一人当たりの負担が増えることが
確定的である将来世代に、過度な負担が先送りされて積まれていく状況は
何も変わらないんですね。

ここでも何度か書いていますが、だから私は学生たちに「ありがとう」と
言っているのです。
私はベビーブーマーですからやたらと同級生がいます。
しかし、私たちが引退するときには、どう考えても私たちの世代よりも少ない
人数の若者たちが負担する税金で、私たちの社会保障費は賄われるのですから。

景気が良かった時に抜本的な財政健全化対策を怠ってきたツケが今出ている
のですね。

消費税を福祉目的化することで問題が解決できるわけではありませんが、
福祉や社会保障の充実を図るための財源として消費税の増税を図るという
理由付けを行うのであれば、福祉目的税化することは理にかなっています。
(一般財源のままで福祉の充実を謳い文句に消費税増税を図ったら、橋本内閣
による消費税5%と同じ徹を踏みかねませんし、今の時代から見た判断では、
あのタイミングでの消費税アップは失政だったとの謗りは免れないと思います)

そうなるとタイミングをいつとみるのか。

与謝野さんは、2012年からの増税に拘りがあるようですが、麻生さんは
景気回復を待っての判断との姿勢を崩していません。
翻って民主党でも小沢代表は、消費税率アップの可能性を全面的に否定しては
いませんが、(ただ将来的な税体系の改革の結果としてのものとしての判断と
考えているものと思います。小沢氏は自民党幹事長時代に消費税率20%を
主張していたわけですし、これを現在でも完全否定していないのですから。)
近々の増税には反対の立場であるだけですね。
その意味では、判断基準の違いこそあれ、麻生さんと主張の隔たりは余り
感じられないですね。
民主党には、消費税自体の存在を問題視するグループもあるようですが。

いずれにせよ、まずはこの補正予算。
補正予算審議の方向性がはっきりしてこないと、選挙後の次の政権の方向性が
見えてこないような気がするので、ここをしっかりと判断していきたいですね。