希望退職制度(1) - 社会保険労務士業務 - 専門家プロファイル

本田 和盛
あした葉経営労務研究所 代表
千葉県
経営コンサルタント

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対象:人事労務・組織

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希望退職制度(1)

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雇用調整・リストラ
 昨今の世界同時不況の中、派遣社員切りから始まった雇用調整が正社員にも及んできました。採用抑制だけではもはやこの経営環境悪化を乗り切れないという企業が、緊急措置として希望退職の募集をはじめています。今回は「希望退職制度」について、私の考えを述べたいと思います。

希望退職制度とは



希望退職制度とは、社員を一方的に解雇するのではなく、社員に退職金の特別加算などの優遇条件を提示し、自発的な退職希望者を募る制度です。希望退職の応募者と会社との合意による退職ですから、整理解雇の場合に見られるトラブルや訴訟に発展することを避けることができます。

希望退職者は本当に退職を希望する者か?



 現実の希望退職制度の運用においては、退職を希望する者ではなく、会社が退職してもらいたい社員に辞めて頂きたいというのが、人事部の本音でしょう。実際、優遇条件による退職を希望する社員だけをオープンに募っている会社は無いと思います。希望退職制度を実施する企業は、どこでも経営環境悪化により余剰人員が増えています。要するに仕事が減ってきているので社員も減らさないと経営が成り立たなくなっているのです。
一方でリストラ後は、少ない人数で業務をこなさなければならないので、事業の屋台骨を背負っている社員に退職されては困ります。希望退職制度を実施することにより会社にとって必要な人材が流出してしまっては、たとえ人員削減が進んだとしても雇用調整に成功したとは言えません。そこで希望退職者の募集と言いながらも、実際には慎重に対象者を選別し、個別の退職勧奨および慰留を行なっているのが現状でしょう。
もちろん大企業では慰留することなしに全希望者の応募を受け入れているケースもあると思いますが、中小企業においては必要な人材の流出は事業の存続に関わる問題なので、対象者の選定は重要な作業になります。

早期退職優遇制度との相違点



ちなみに同じような制度として早期退職優遇制度があります。こちらは定年を待たずして早期に退職する社員に対して自己都合退職扱いではなく、会社都合退職として退職金の満額支給や加算等を行なう制度で、導入企業において恒常的な制度として運用されているものです。
希望退職制度との違いは、希望退職制度が一定の期限を決めて時限的に運用されるのに対し、早期退職優遇制度は恒常的な制度として運用される点にあります。また希望退職制度が経営悪化にともなういわゆる「リストラ」の一貫であるのに対して、早期退職優遇制度には、第二の人生への円滑な移行を支援するという意図と、社員の新陳代謝を促進する目的が込められています。50歳以上など対象年齢が限定されていることが多く、また応募期間や目標人数も設定されないのが一般的です。

★次回のコラムでは、希望退職制度の設計について解説します。

<執筆者>あした葉経営労務研究所 代表 
     凄腕社労士 本田和盛
<執筆協力>あした葉経営労務研究所 客員研究員 
      中村伸一(アンジェスMG株式会社)