- 石橋 大右
- 株式会社和上ホールディングス 代表取締役
- 大阪府
- 住宅設備コーディネーター
対象:住宅設備
- 松林 宏治
- (住宅設備コーディネーター)
- 松本 秀守
- (住宅設備コーディネーター)
温室効果ガスである二酸化炭素排出削減の国際的な枠組みとして「京都議定書」があったことを覚えている人は少なくなったのではないでしょうか。一時期は当たり前のようにニュースに登場していた言葉ですが、最近はすっかり聞くことがなくなりました。
京都議定書はどうなった?という疑問への答えとともに、2025年から始まるトランプ次期米国政権の話も絡めてお話をしたいと思います。
最初に、京都議定書について。京都議定書は1997年に開催された国連気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択された議定書のことです。会議が京都で開催されたことにちなんで、京都議定書と呼ばれています。
京都議定書では2008年から2021年までの間に温室効果ガスの排出量を1990年費で5%削減することを目標としました。この時の会議名がCOP3ということから想像がついた人もいるかもしれませんが、現在も進んでいるCOP会議の草分けのような時期の会議です。そして、この京都議定書は世界で初めて環境保護のための約束を取り交わしたこととして歴史的な偉業となったのです。2024年11月にアゼルバイジャンで開催された国連気候変動会議はCOP29となっており、京都議定書が発効したCOP3から数えて26回目です。それだけ世界は何度も会議を重ねて気候変動を食い止めようと努力してきたわけです。思うような結果にはつながっていませんが、ここまで世界が何とかしようと努力してきたことは評価できるでしょう。
そんな京都議定書ですが、すでに議定書自体は失効しています。なぜなら、その後始まったパリ協定に引き継がれているからです。最近京都議定書のことを聞かなくなったこと、その代わりにパリ協定の話がよく出てくるようになったのは、これが理由です。つまり、パリ協定の話が出てきたらそれは京都議定書の続きだと解釈して問題ありません。
さて、京都議定書の後継者であるパリ協定は、2024年11月にアゼルバイジャンのバクーという街で開催されたCOP29でさまざまな議論が交わされました。そこで最大の懸案かつ議題となったのが、2024年の大統領選挙で返り咲きを果たしたトランプ次期大統領についてです。それもそうでしょう、前回のトランプ政権では就任直後にパリ協定を離脱して、アメリカはその枠組みから離れて行ったのですから。その次の大統領選挙ではバイデン氏が勝利し、政権は民主党に交代。民主党は環境政策を重視しているので、パリ協定に復帰しました。そのアメリカが、トランプ次期政権によってパリ協定を再離脱するのではないかと見られています。事実、トランプ氏は選挙戦の段階でも当選したらパリ協定から再離脱すると公約してきました。この経緯を考えると、トランプ次期政権がパリ協定を離脱するのはほぼ間違いないでしょう。
これだけを見ると、「トランプは環境保護について何も考えていない、けしからん」となるかもしれません。しかし、もちろん彼にも言い分はあります。それは、地球温暖化の理由が二酸化炭素によるものかどうか科学的な根拠がない、というものです。それに加えて、トランプ氏は「アメリカ・ファースト」。アメリカ経済を何よりも優先するのが政策の根底にあるので、無用な環境政策はアメリカ経済のためにならない、というわけです。
これに対して、いわゆる環境保護勢は猛反発。COP29でもそれを意識した発言が相次いだわけですが、実はこのトランプ氏の一連の発言というのは科学的な根拠がないわけではありません。というのも、地球温暖化は太陽の都合によるものであり、これまで氷河期だったものが温暖期に移行しつつあるとの説も説得力があるからです。もちろん二酸化炭素などの温室効果ガスが影響を及ぼししているのも事実ですが、人類にそこまでの影響力はないというのが「太陽犯人説」の根拠です。もし太陽のほうが地球温暖化に大きな影響を及ぼしているとしても、二酸化炭素の増加が温暖化に関わっている事実は変わりません。せめて人類にできることは対策していこうというのがパリ協定の枠組みなので、それを推進することは私も賛成です。
ただ、トランプ氏が主張することにも一理はあります。実際に二酸化炭素よりも太陽の影響のほうが大きいとするエヴィデンスや学説はたくさんあるのですから。
また、国際的な安全保障の観点からもアメリカ単独のパリ協定離脱は好ましくないと考えています。その理由は、中国の台頭です。あまり日本では知られていないかもしれませんが、中国は次世代の環境先進国としての地位を確保しようとしてさまざまな技術革新や政治的な働きかけを行ってきました。世界に設置されている太陽光パネルの大半が中国製であることもそのひとつで、それ以外にも環境分野での市場拡大を目論んで戦略的に行動している事実があります。世界が環境保護を訴えるほど、中国の影響力が増すという国際情勢がすでに現実になりつつあります。その状況でトランプ氏がアメリカ単独でのパリ協定離脱となると、「アメリカはもう環境ビジネスに関心がない」として世界から孤立する恐れがあります。特に環境破壊や気候変動の影響を受けている国々から見れば、なおさらでしょう。そこに中国が「私たちはあなたたちの味方です」と近寄ってきたら、それらの国々がどちらを選ぶかは明白です。このことをあまりトランプ氏は考えていないでしょうし、その側近たちも然りでしょう。自分だけ良ければいいという考え方は国際社会の常識でもあるので完全な間違いではありませんが、それがやがてブーメランとなってアメリカに刺さってしまうようなことになったとき、一体どうするのかな?と思ってしまいます。
日本には「もったいない精神」がありますし、ごみの分別などについても意識が高く、国民も含めた環境先進国というのは間違いありません。その国民性をうまくいかして国際社会でも存在感を発揮してほしいと思いますが、今の総理がこれでは・・・笑
このコラムの執筆専門家
- 石橋 大右
- (大阪府 / 住宅設備コーディネーター)
- 株式会社和上ホールディングス 代表取締役
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