- 石橋 大右
- 株式会社和上ホールディングス 代表取締役
- 大阪府
- 住宅設備コーディネーター
対象:住宅設備
- 松林 宏治
- (住宅設備コーディネーター)
- 松本 秀守
- (住宅設備コーディネーター)
出口戦略とは、投資の「終わり」をどうするかを決める戦略のことです。
例えば株式投資であれば、保有している株式を売却して1つのトレードが終了します。買った時よりも高い価格で売れば利益が出るので、そのためにはどうするかを考えて銘柄を選びます。これが、株式投資の出口戦略です。
もっとスパンの長い不動産投資の場合は、売却するか保有し続けるか、さらには子の世代に相続するか。いずれにしても自分が投資を終える時はあるわけで、それを想定しておく出口戦略が必要です。
このことは、太陽光発電投資にも当てはまります。太陽光発電投資は不動産投資と似た部分があるため(土地の所有を伴うこと長期スパンであることなど)、不動産投資と似た出口戦略を模索することになります。とはいえ、太陽光発電所はエネルギーを生み出すという不動産投資にはない付加価値があるため、それゆえの選択肢があることにも注目です。
太陽光発電投資の出口戦略として考えられる選択肢は、主に5つあります。
①自家消費への移行
②FIT期間終了後も継続して売電
③非FIT電力として供給
④中古市場で発電所を売却する
⑤太陽光発電所を撤去する
②と④は不動産投資にも似た概念がありますが、それ以外は太陽光発電特有のものです。それでは、1つずつ概要を見ていきましょう。
①自家消費への移行
FIT(固定価格買取制度)を前提にした太陽光発電投資の場合、FITの期間が満了すると以後の買取価格は大幅に低くなってしまいます。特に初期のFITで高い買取価格が保証されていた案件だとその落差が大きいので、キャッシュフローにも深刻な影響を及ぼすでしょう。
そこで取りうる選択肢として、自家消費があります。所有している太陽光発電所で生み出された電力を自社で運営しているビルや工場などで消費するビジネスモデルです。電力を消費する建物や施設などを所有していることが前提になりますが、電気代が高騰している昨今では有効な光熱費対策になります。
また、企業として太陽光発電所の運用をしていた場合、それを自家消費に移行すると環境品質の高い電力を使用しているということでRE100の取得などといったお墨付きがもらえる可能性があります。近年では企業が使用する電力の品質が問われており、企業価値向上に資する選択肢でもあります。
②FIT期間終了後も継続して売電
FIT期間が満了しても売電スキームそのものがなくなってしまうわけではないので、引き続き売電をすることは可能です。ただし、FITによって下駄が履かされていた分がなくなるので、買取価格は1kWhあたり10円前後になってしまうでしょう。FITで30円、40円という単価で売電ができていた太陽光発電投資だと、それが3分の1や4分の1になってしまいます。
しかし施設の更新などが不要で、売電契約を少しでも高いところに変更するだけなので、比較的手軽に売電スキームを維持できます。
③非FIT電力として供給
非FIT電力とは、そもそもFITに依存しない電力供給スキームのことです。電力会社は太陽光発電事業者から電力を買い取り、それを「太陽光発電由来の電力」として販売します。先ほど自家消費の項目で電力の品質について述べましたが、近年では企業が使用する電力の品質が問われています。
自社で太陽光発電所を運営することでその要件を満たせるわけですが、既存の非FIT電力を買い取って使用することによって、電力品質を高めることもできます。そういった非FIT電力のあっせんをしている業者もあるので、こうした業者に売電をすれば非FIT電力を求めている企業に継続的な売電が可能になります。
今はまだ卒FITの電力買取とそれほど価格は変わりませんが、今後RE100などの浸透によって電力の品質が今以上に問われるようになってくると、太陽光発電由来の電力であることが高い価値を持つため、売電価格が高くなっていく可能性があります。
なお、私が代表を務める和上ホールディングスは、非FIT電力(Non-FIT電力)の買い取りと販売のサービスを提供しています。
④中古市場で発電所を売却する
太陽光発電所を不動産物件のように売買する流通市場があります。中古市場、もしくはセカンダリー市場と呼ばれており、和上ホールディングスには「とくとくファーム」という売買マッチングサービスがあります。
太陽光発電所は収益を生む不動産なので、アパートやマンションといった収益物件と似た感覚で売買されています。出口戦略として売却を考えているのであれば、こうしたすでに確立している中古市場で適正価格で売却するのがよいでしょう。
⑤太陽光発電所を撤去する
所有している太陽光発電所での事業から撤退するのであれば、発電所を撤去するのも出口戦略のひとつです。市街地に近い場所であれば跡地に工場や倉庫、駐車場などを設置して不動産物件として運用することも可能でしょう。
この出口戦略を描く場合は、最初から太陽光発電所の場所選びにおいて、「将来は別の用途に転用する」ということを見越した検討が必要になります。山間部や休耕地などで太陽光発電所を運用してきた場合は他の用途への転用は難しく、その場合は売却を選択したほうが無難でしょう。
これらの出口戦略はいずれも、太陽光発電投資を始める時に描いておくことが前提になります。そうでなければ、いざ出口戦略を実行するときに「こんなはずではなかった」となってしまう可能性が高く、投資そのものが失敗に終わる恐れもがあります。
このコラムの執筆専門家
- 石橋 大右
- (大阪府 / 住宅設備コーディネーター)
- 株式会社和上ホールディングス 代表取締役
太陽光発電とオール電化を追及するプロフェッショナル
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