差し止め中の改正規則は米国特許法に反するか?-6- - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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差し止め中の改正規則は米国特許法に反するか?-6-

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米国特許判例紹介:差し止め中の改正規則は米国特許法に反するか?

        Triantafyllos Tafas. et al.,
        Plaintiffs-Appellees,
             v.
         John J. Doll. et al.,
          Defendants-Appellants.

    〜継続出願の回数制限は違法か〜(第6回) 
河野特許事務所 2009年4月17日  執筆者:弁理士  河野 英仁


(2) 規則114・・RCEの回数制限
RCEの回数制限は米国特許法第132条の規定に反するものではない。
 米国特許法第132条は以下のとおり規定している。
「第132 条 拒絶通知;再審査
(a) 審査の結果,クレームが拒絶されるか,又は何らかの異論若しくは要求が行われた場合は,特許商標庁長官は出願人にその通知をしなければならず,そのときには,当該の拒絶又は異論若しくは要求の理由を示し,出願手続を続行することの適切性を判断する上で有用な情報及び引用文献を添付しなければならない。出願人が当該通知の受領後,特許を求めるクレームを,補正して又は補正しないで,持続するときは,その出願(application)は再審査されるものとする。補正によって発明の開示に新規事項を導入することはできない。
(b) 特許商標庁長官は,出願人の請求による特許出願の継続審査について規定する規則を制定しなければならない。特許商標庁長官は,当該継続審査に対する適正な手数料を定めることができ,また,第41 条(h)(1)に基づいて手数料の減額を受ける資格を有する小規模事業体に対しては,当該手数料を50%減額しなければならない。」

 規則114は、一出願に対してではなく、親出願及び継続出願を含む出願ファミリーの複数の出願に対し、1回までという制限を課すものである。地裁は、米国特許法第132条の出願が「application」と単数で規定されていることから、複数の出願に対して制限を課す規則114は米国特許法第132条の規定に反すると判断した。

 しかし、CAFCはHenriksen事件で判示された「“出願an application”は必ずしも単一の出願だけを言及するものではない。」点、及び、合衆国法典Title1Chapter1の”Rules of Construction”における「単数の単語は、複数の人、集団またはものを含み、また適用される(1. U.S.C. 1)」点を示した。CAFCは米国特許法第132条における単数の出願は複数をも含み、規則114が複数の出願である出願ファミリーに対して適用されることに何の違法性もないと判示した。

 また、被控訴人は、米国特許法第132条(a)は、「出願人が、特許を求めるクレームを・・持続するときは・・再審査されるものとする」と規定していることから、当該規定は、USPTOに審査を継続することを要求するものであると主張した。

 しかしながら、CAFCは、当該議論は、米国特許法第132条(a)と(b)との関係に対する誤解に基づくものであると述べた。すなわち、米国特許法第132条(a)の規定は、「最初の審査後に、出願人の要求に基づき再審査の機会を付与する」ものである。

 その一方で、同法(b)は、
「(b)The Director shall prescribe regulations to provide for the continued examination of applications for patent at the request of the applicant.
(b) 特許商標庁長官は,出願人の請求による特許出願の継続審査について規定する規則を制定しなければならない。」
と規定している。すなわち、同法(b)の「継続審査”continued examination”」 は同法(a)に基づく再審査が済んだ後に発生する審査である。USPTO長官は、この後に発生する審査について規則を制定することができるのである。

 以上のことから、出願ファミリー内において2度目以降のRCEに制限を課すことは何ら米国特許法第132条に反するものではないと判示した。


(第7回に続く)