あえて「リモートワークには向かわない」という考え方
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コロナ禍を機に、在宅勤務をはじめとしたテレワーク、リモートワークを導入する企業が大きく増えました。
私の周りでは、すでに制度として定着して、週数日からほぼ毎日すべての仕事を在宅で行っているような人がいる一方、一時期は在宅勤務が実施されていたものの、現在はほぼ元通りの出勤体制となっている人もいて、リモートワークに対する姿勢は会社によってさまざまです。
私自身は、コロナ前からリモートワークがほとんどで、仕事は自宅でしたり事務所でしたり、移動途中のカフェやレンタルのワーキングスペースを使ったり、その時のスケジュールや気分によって、いろいろな場所で仕事をしています。
もともと、「なぜ予定がなくても始業時間に必ず行かなければならないのか」とか、「なぜこんな混んで時間がかかる電車で移動するのか」などと思っていたので、このような働き方が自分にとっては柔軟で効率が良く、働きやすいと思っています。ずっと前からリモートワークを肯定的に捉えていました。
ただ、私とは反対に、否定的な考えの人も大勢います。やはり組織、チームで動くことが多い職場の場合、「メンバー同士の場の共有」「対面でのコミュニケーション」ということには、間違いなく大きな意味があります。リモートワークを実施していたのに元に戻した企業は、みんなこのことを要因として挙げます。
確かに、チームスポーツの中ですべて自主練だけで済ませるチームはありませんし、もしあったとしても、実際に勝つことは難しそうに思います。最近は個人競技の選手も、合同練習や合宿などを通じ、チームとして動くことで結果を出していることもあります。
高い成果を望もうとすると、チーム戦術の熟成もお互いの切磋琢磨も必要であり、個人、個別でやることに限界があるのは確かでしょう。
コロナ禍の前から、外資系企業のアメリカ本社では、リモートワークを廃止するような動きが次々出ていました。理由はチームとしての機能が落ちて業績が下がっており、その原因の一つにリモートワークがあると見られていたようです。
グーグル、アップルのような先進的な発想をする企業でも、リモートワークについてはあまり積極的ではなく、どちらかといえばオフィス環境の充実に重きを置いているということを聞きます。
最近では、テスラ社長のイーロン・マスク氏が、リモートワークを否定する過激なSNS投稿をして話題になりました。
オフィスを充実させる動きで印象に残っているのは、メッセンジャーアプリ大手のラインのオフィスです。
こちらもコロナ禍をさかのぼる数年前に話題になりましたが、単にオフィスのそのものの立派さだけでなく、以下のような設備が紹介されていました。
・電動で高さを調節でき、立って仕事をすることもできるデスク
・自席から離れて気分を変えて仕事ができるワークスペース
・予約なしで使えるモニター付きミーティングスペース
・防音措置がされた個室スペース
・休憩も仕事もできる和室スペース
・広いカフェと豊富な飲食メニューはLINE Payで決済可能
・ビリヤード台やダーツがある娯楽スペース
・1時間500円で受けられるマッサージ、予約が埋まっている時のためのマッサージチェア
など。
画像を見るとさらにわかりやすいですが、これを見ると、いくら私がリモートワークに肯定的だといっても、さすがに「在宅勤務よりもこのオフィスに行きたい」と思います。
社員の「働きやすさ」を追求して、その結果としての「生産性向上」を目指す中では、こういったアプローチも一つの方法です。
どこの会社でもできることではありませんが、「ぜひ通いたい、ぜひ働きたいと思えるオフィスを作る」という考え方は、チーム重視の職場であれば有効でしょう。
リモートワークを縮小する会社に対する不満の声を耳にしますが、このようなオフィス環境を用意したうえで出勤体制を求められるのであれば、その考え方は理解できます。出勤が難しい特別な事情がある人以外は、許容せざるを得ないとも思います。
リモートワークも、オフィス勤務も、それぞれに利点があります。その利点を大きくする工夫をしながら、両方をうまく組み合わせて活用する形を考えていく必要があるのではないでしょうか。
このコラムの執筆専門家

- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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