「言えば通るかもしれないから」というクレイマーの話
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数年前のことですが、ある私鉄の車掌が、乗務する電車が人身事故の影響で運転中止になった状況説明に当たっていたところ、複数の乗客から詰め寄られたことに耐えきれなくなって、制服を脱ぎ捨てて線路を走り出し、高架から飛び降りて重傷を負うという事件がありました。
この車掌の行動は認められるものではありませんが、乗客6、7人に囲まれて喧嘩腰のクレームを受けていたらしく、当初は冷静に対応していたものの、気持ちが切れてしまって起こしてしまった行動のようです。
ネット上やその他一部メディアでは、「乗客側の行き過ぎたクレームだったのでは」「従業員をもっと大切にすべき」など、この車掌を擁護する声がいくつも出ていました。
私は常々、日本での「お客様は神様」は行き過ぎていて、限度を超えたクレイマーには断固としてノーと言うべきだと思っています。クレイマー的な人が身近でも目につくことが多くなっている気がしますが、何かにつけてクレームを言う人が、それだけ増えているということでしょう。
このクレイマーに関する話で、いつも思い出すことが一つあります。
ずいぶん前のことですが、あるカフェで隣に座った若い男女が、飛行機に乗り遅れそうになった時の話が何となく聞こえてきてしまいました。
自分の寝坊が原因で、なおかつ手続きを間違ったりするなど自分たちに全面的に非があったが、それを何とか認めさせようとあれこれ無理強いをしたという話でした。
苦情を言い続けて粘ったとか、逆ギレしたとか、上司を呼べと言ったなどということでしたが、気になったのは、「この程度なら文句を言えば通る」「とりあえず強気で行けば認められる」などと言っていたことです。
最近思うのは、このように「まず自分の都合を最大限要求する」といった、悪い意味でのディベート的な発想、相手との交渉や駆け引きのような気持ちで、その時の気分に任せてある意味気軽にクレームを言っているように見える場合が多いことです。
これは「相手が自分には反論してこない」「言えば通るかもしれない」という気持ちを持たせているという面があります。
私はいくら相手がお客でも、やはりダメなものはダメだと、毅然とした態度が必要だと思っています。交通機関でトラブルになるのは、中高年男性の酔っ払いが多いなどと聞きますが、一度警察のお世話にでもなれば、もちろん警察にとっては無駄で迷惑な話ですが、多くの人はずいぶん反省するのではないでしょうか。
そして、こういうときの会社の立場として、もっと従業員を守らなければいけないと思います。クレームの内容次第では、自分たちの言い分で反論することも必要でしょう。
「言い分が簡単には通らない」と知れば、おかしなクレームはずいぶん減るのではないでしょうか。一方的に謝ったり、土下座をしてしまったりしているようでは良くないと思います。
このコラムの執筆専門家

- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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