- 阿妻 靖史
- パーソナルコーチ
対象:コーチング
感情に責任を持つって?
私たちは、誰かに嫌なことを言われたり、されたりしたとき、怒ったり悲しくなったりします。でも10歳頃を境に激しい感情は感じなくなるものなのです。大人になってもコントロールできないほど強い感情を感じるとき、それは子供時代に癒されなかった感情が出てきています。強い感情の90%分は子供時代の感情。残りの10%が大人として感じる分です。つまり「彼に侮辱されて頭に来た!」と感じたとしても、実際にはその怒りの10%が本来の感情。残りの90%が子供時代に親にほめられたかったり分かってほしかったけれど、満たされなかった想いの分です。どんな感情が出やすいかは人によって(=子供時代の経験によって)違います。
私たちが感じる強い感情の90%分が過去の感情だとすると、感じる感情の強さは、人それぞれ、特に過去の経験によって異なるわけです。
つまり、小さい頃に親からいつも叱られ、けなされて、「認めてほしい」「分かってほしい」「寂しい」あるいは怒りの感情をため込んで成長した人は大人になってから、特に恋愛の時に相手に「認めてほしい」「分かってほしい」「寂しい」と強く感じたり、あるいは、相手に素っ気なくされたときに怒りや憤りを感じたりします。
一方、小さい頃に親からほめられ、認められて、自分を大切にする気持ちを十分に育てることのできた人は、相手に素っ気なくされたとしても、もちろんちょっと寂しいと思ったりしますが、強い憤りを感じて相手を責めてしまったり、その後後悔して自己嫌悪するようなことはないわけです。
恋愛がうまく行く人と、どうしても感情的になってしまって恋愛を壊してしまう人の最大の違いは、過去にため込んだ感情にあると私は考えています。彼に笑顔で接するとか、相手を上手に持ち上げていい関係を作るとか、ありがとうを欠かさないとか、恋愛がうまく行くための法則は色々あります。ですが、感情が乱れたときに法則通りに行動できる人はほとんどいないのです。分かっていてもできない。こうなってしまいます。
一方で、上手に恋愛し、幸せに生きている人もいます。ネガティブな感情の感じ方が10%つまり大人の分だけだから、感情に振り回されずにすんでいるのです。これはちょうど、骨折に似ています。子供の時の感情が癒されていない人は骨が折れている状態。相手がちょっとさわっただけで飛び上がるように痛いわけです。相手にしてみれば、ちょっとさわっただけなのにいきなり泣いたり怒ったりするわけですから、わけがわかりません。
こんな風にして、子供時代の感情が恋愛に大きく影響するのです。
では、子供時代のどんな経験が恋愛に影響するのでしょうか。
一番大きく響くのは、両親が不仲であったケース。恋愛や結婚生活に対して警戒心を抱くことになります。「結婚は人生の墓場」「私はまだ結婚しないで自由な恋愛をしていたい」こういう発言をする人の心理的な背景は「結婚すると自由がない」「結婚は息が詰まる」というもので、両親や身近な人の結婚生活が息苦しかったり、型にはまっていて、「正しい」けれど「楽しくない」ものになっていた場合が多いのです。
あるいは、両親が厳しく、いつも認めてもらえず、頑張って頑張って、ようやく叱られずにすんだような場合。恋愛でも頑張って頑張ってようやくちょっとだけ幸せというご褒美を得ていい、みたいな辛い恋をしてしまったり、人を心から信じないために孤独になってしまうことがあります。
暴力をふるわれたり、暴言をいつも受けていた場合は、心の底に怒りを抱えます。こうなるとちょっとしたことで「キレる」こともあります。過去の怒りが出ているのです。
親がきちんとしていることは、悪いことではありませんが、几帳面で厳しい親の元で育つと、完璧でない自分をいつも意識させられて劣等感を抱えてしまい、恋愛においても素敵な人にアタックすることが怖くてできなかったり、運良く素敵な人と交際できても「素敵な彼とこんなダメな自分」を比較してしまい、自分らしくのびのびといられなくなってしまったり、自信のなさから嫉妬や束縛に至ってしまったり、あるいは相手のあら探しをしてしまい、恋愛をつまらなくしてしまう、ということになることだってあります。
また、親だけでなく、兄弟関係の葛藤の中で「いつも損をしていて嫌だ」とか「いつも勝てなくて情けない」みたいな感情を抱えることもあります。
では、こうして子供の頃の感情を心にため込んでしまったら最後、子供時代の感情に振り回される人生を送らなければいけないのでしょうか?
答えはNo。
恋愛セラピーでは、こうした過去の感情を解放・浄化するための心理学の技法を駆使して、頑張って恋愛するのではなく、頑張らなくても恋愛がうまく行く心を作ることにとり組むサポートをしています。
ひとりでとり組む場合は、私が立ち会って行うワークほどの効果は望めませんが、たとえば、「出さない手紙」を書いてみることをお勧めしています。これは、子供時代を振り返り、感情的なわだかまりを持っている相手、たとえば親に対して「不満の手紙(自分→親)」をまず書き、次に相手の立場になって自分に「謝罪の手紙(親→自分)」を書きます。最後に、そんな親でも感謝できるところは必ずあると思いますので、「感謝の手紙(自分→親)」を書きます。
実際の親に不満をぶつけたり、感謝の気持ちを伝えることは、必ずしも得策ではありません。子供時代には親も余裕がなくて、色々苦しかったけれど、今はゆとりが出ていて、人柄も穏和になっている、という場合なら、出さない手紙ではなく、直接対話をしてみてもいいかもしれません。
但し、大事なのはあくまで、自分の心の中で整理をつけることなのです。
本当の親に謝ってもらわないのに、意味があるのかと感じるかもしれませんが、私たちが本当に望んでいることは、私のその気持ちは、正しいよね?という確認なのです。そして、確認が必要だと感じるのは、自分で自分の気持ちを肯定できないからです。
だから、自分の気持ちを自分で肯定する習慣をつけることが、解決の道になるのです。
ひとりでとり組むのが難しい場合、セラピストの助けを借りた方が、解決が早いと思います。