- 寺崎 芳紀
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
- 東京都
- 経営コンサルタント
-
03-5858-9916
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
- 荒井 信雄
- (起業コンサルタント)
こんにちは!介護経営コンサルティングと介護施設紹介「株式会社アースソリューション」の寺崎でございます。
今回は、来春予定の介護報酬改定について、居宅介護支援事業の「逓減制」について書かせていただきます。
居宅介護支援事業において、介護支援専門員(ケアマネ)1名につき担当できる利用者数は、概ね35名と定められています。
しかし、35名を超えたとしても違反にはなりません。具体的には、40名までは通常の報酬単位を算定することができますが、それを超えてしまうと報酬が下がるという、いわゆる「逓減制」を設けています。
介護保険制度が施行されて間もない頃は、担当人数の制限というものは存在しませんでした。
従って、ケアマネ1名で70人も80人も担当するというケースが、実際にはありました。中には100件担当していたケアマネもいました。
ただ、平成18年改正において、質の高いケアマネジメントをケアマネに求めるようになり、人数制限を設けるようになったのです。
例えば、要介護1~2の方を担当すると、月1057単位。要介護3~5の場合は1373単位もらえます(居宅介護支援費Ⅰ)。
これは、利用者数が40名までの単位数なのですが、これを超えると「居宅介護支援費Ⅱ)を算定することとなり、超えた分については要介護1~2で529単位、要介護3~5で686単位まで下がってしまいます。
これが逓減制というもので、居宅介護支援費Ⅰ→居宅介護支援費Ⅱとの差は半分以上となります。
昔は、40件超となりますと、全件が居宅介護支援費Ⅱに転落するというルールでした。これはさすがに厳しすぎるということで、超えた分について逓減制が適用されるルールに改正されました。
また、特定事業所加算を算定している事業所については、ケアマネ1名あたりの担当利用者数が40件に納めないといけません。これを超えてしまうと、逓減制の適用となるだけでは済みません。特定事業所加算の算定ができなくなるので取り下げ、既に算定してしまった加算は返還を求められます。
今回、これを何とかすべきではないかという議論が、介護給付費分科会でなされたのです。
以前からも本コラムでも何度も取り上げておりますが、居宅介護支援事業は全介護サービスの中で唯一収支差率がマイナスとなっている事業です。
真面目やってもマイナスになるわけですから、もはや事業性などありません。ボランティアと同じか??と思ってしまいます。
それでいて、厳しい基準の中でケアマネさんは業務に忙殺され、本当に大変な中でお仕事をされているわけです。
ところが、一所懸命仕事をしても利益が上がらない。ケアマネさんの処遇も上がらない。やっていられない!!ということになっているのです。
今回、この逓減制を緩和しようという議論がなされています。
あくまで案ですが、一定の条件を満たした事業所については、逓減制の基準を40件超から45件超に緩和しようということです。
一定の要件については、「ICTを効果的に活用し業務効率化を図る」「事務員を配置する」取り組みをした事業所が対象になる、という案が支配的のようです。
逓減制の緩和措置には、賛成です。
もちろん、昔みたいに無限にケースを持つというのは問題外として、上手に体制を整えることで余裕ができるのであれば、無理やり現行の逓減制にこだわらなくてもよいと思います。
しかし、今回提示されている案には、少々疑問も残ります。
それは、ICTの導入はどの程度行えば対象になるのか、また事務員の配置はどの程度行えばよいのか(常勤・非常勤に関わらず、ただ配置すればよいのか)等です。
まさかこんなことはないと思うのですが、もし事務員を常勤で1名以上配置・・・なんてことになれば、全く意味をなしません。事務員のコストの方が当然高いわけですから、ケアマネをたくさん抱えているような事業所でないと無理です(もっとも、ケアマネを10人位抱える大規模な事業所は、だいたい事務員を配置していますが)。
また、特定事業所加算との関係も、今回の提案を見ただけでは微妙です。
当然、特定事業所加算との整合性も考えないといけません。逓減制の対象にはならないが、特定事業所加算の算定要件は変更しないということになれば、全く意味がないということです。
個人的な意見ですが、「ケアマネ1名につき40人まで」という要件を、特定事業所加算の要件から外せばよい。
現状、ケアマネには5年ごとの資格更新時に研修を義務づけているし、ケアプラン点検事業というものもある。なので、青天井にさえしなければ、「1名あたり40人まで」というルールを特定事業所加算の算定要件に入れる必要はないと思います。基準に違反するひどい事業所は、監査を厳しくして指定取り消しにでもすればよいのです。
事業性が全くない、もっと言ってしまえば真面目にビジネスをしても最低限の利益が上がらず赤字になるようなビジネスなど、絶対にありえない。
こんなことを認める位なら、いっそのこと措置の時代に戻せばよいのです。
どうか、普通に頑張ってご利用者様や地域のために働けば、普通に処遇が整備されて長く働けるような環境を、ぜひ整えていただきたい。
そして、制度的矛盾を発生させない設計をしていただきたい。
このコラムの執筆専門家
- 寺崎 芳紀
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
介護事業所の開設から運営まで、オールワンでお手伝いいたします
有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。
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