「天狗になる人」よりも扱いが難しい「卑下する人」
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いくつかの会社で、コンサルティングの一環として、人事評価面談に立ち会うことがあります。上司の面談のしかたをみて、後からアドバイスしたり、第三者が立ち会うことで一方的な評価にならないように仕向けたり、他社の事例などを引き合いに話すことで、評価の納得性を高める助けにしたりということが目的です。
本人の自己評価と上司評価を突き合わせて面談する会社が多いですが、高い自己評価をつけてアピールしようという人を見かける一方、ごくまれに、極端に卑下した自己評価を出してくる人がいます。
今から数年前になりますが、ある会社で全評価項目をすべて最低点でつけてきた人がいました。上司は何度か、もっと客観性を持った自己評価に直すようにという指導をしたようですが、面談時は結局そのままの自己評価で出てきていました。
本人に話を聞くと、とにかく「自分は何もかも不足していて、評価されるに値しない」「評価基準に達しているものは一つもない」と言います。確かにものすごく優れているとは言えないし、みんなをリードして引っ張っていくタイプでもありませんが、等級に見合った標準的な能力と、決して最低ではない成果もあります。
このときは、納得しない本人を説得して評価を引き上げるという、ちょっと不思議な感じの面接になってしまいました。
また、別のある時、この会社で残業削減を図ることとなり、まずは事前申請と承認の強化という施策を取ることになりましたが、ある日前述の「卑下する人」がサービス残業をしていることが発覚しました。
会社や上司の強要は一切なく、無理な作業量ということもなく、どうも本人の意思で、自ら進んでサービス残業をしていたということでした。
理由を聞くと、「時間内に終わらせる指示を守れないのは自分の能力不足」「会社に迷惑をかけているので残業代はもらえない」と言います。しかしこれは、いくら本人が良くても結局は法律違反で会社の責任になります。
そういう話をして納得させましたが、しばらくたってから今度は家に仕事を持ち帰っているらしいことがわかります。
「さらに会社に迷惑をかけることになる」と再度注意し、その後はルールを守るようになりましたが、上司はまた何かやるのではないかと気が気ではありません。
自己評価が高くて「天狗になっている人」は困りものですが、その行動や態度は目につきやすいので、気になることはすぐに発見でき、注意も指導もできます。
一方、今回挙げた「卑下する人」の行動は、相当に注意していなければ見つけられません。課題が潜在化してしまうことで注意する機会もなくなり、本人には悪気がないということで、さらに見つけづらくなります。
一見すると、「天狗になる人」よりも「卑下する人」の方が従順そうに見え、扱いやすいと思われるかもしれませんが、行動が見えづらいということで考えると、実は「卑下する人」の方が扱い方は難しいかもしれません。
めったにいないタイプの人かもしれませんが、こういうことも起こり得るという心の準備はあっても良いと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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