- 寺崎 芳紀
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
- 東京都
- 経営コンサルタント
-
03-5858-9916
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
- 荒井 信雄
- (起業コンサルタント)
こんにちは!株式会社アースソリューションの寺崎でございます。
今回は「看護師不足の苦難」の3回目として、前回お話した看護師の日雇派遣に関する議論についてお話いたします。
11月5日に行われた社会保障審議会・医療部会の会合において、介護施設にて看護師の日雇派遣を認めるべきか否かについて議論されました。
看護師に関して、労働者派遣が認められていることはご存知かと思います。
前々回のコラムでも紹介したように、私もかつて派遣看護師さんをフル活用しておりましたし・・・
派遣が認められていなかったら、多くの施設が立ち行かなくなるのではないかと思います。
ただ医療機関ほどではないにせよ、本来は介護と医療側の連携は不可欠ですので、本来は看護師を労働者派遣にて配置するのは馴染まないものです。
ましてや、看護師が日によって変わるのは、あるべき姿ではありません。今日はAさん、明日はBさん、あさってはCさん・・・というように変わると、非常にやりにくい。
やりにくいのは、看護師さんにとっても同じだと思います。
看護師にしかできない(介護職員にはできない)医療行為や処置、判断をしていただくことになりますので、本当はご利用者様のことをしっかり把握してくれている看護師の方が望ましいのは当然です。
しかし、いかんせん看護師確保が厳しいのです。
少なくとも私が現場にいた頃は、そんな悠長なことは言っていられませんでした。
そういう部分を鑑みて、看護師の日雇派遣を認めるという話になったのでしょう。
先に閣議決定した「規制改革実施計画」の中に、本件については盛り込まれています。
ですので、医これを受けて厚生労働省がニーズ調査をした上で、医療部会において審議され決定していく流れになります。
しかし、私は大いに疑問に思います。
看護師の日雇派遣を認めたら、人材不足は解消されるのでしょうか。
私は「最悪、日雇でもよいですよ」という安易な考え方にしか見えませんね。
実際、日雇でいきなり来た看護師も、恐らく何もできないでしょう。ですので、最低限の日常管理に限定しないと難しいと思います。
それでもいないと人員基準上においても困るので、「いないよりはマシ」という感じになりかねません。
人材不足の解消までは期待できないのは、まあ仕方がないとして、本当に現場のことを考えて議論しているのでしょうか。また、看護師のニーズや考えを、本当に踏まえた議論なのでしょうか。
ニーズ調査は今後行うとのことなので、どういう結果になるのかは見守りたいのですが、
・派遣会社は、新たな収益の柱になり得るので、プラスかと思われる。
・看護師については、賛否両論あるかもしれない。でも基本的には日雇派遣はリスクが高いと考える意見が多数を占めると思われる。
と私は考えます。
働き方は多様でよい。
しかし、介護施設においては「安全」が最低限担保されていなくてはならない。だから難しい。
派遣看護師にとって、いくら居心地がよくて長く働いている施設があったとしても、直接雇用には結びつかないことも多い。何故なら、派遣の方が断然時給が高いからです。
働き方の多様化が、現場ではある意味歪な感じになっていて、安定的な雇用(人員配置)を難しくしている。
近年では、看護師やリハビリ職といったコメディカルでなく、ケアマネや介護職員の人材紹介が非常に増えているようです。紹介手数料はめちゃくちゃ高いですが、それでも活用しないとどうにもならない。
労働者派遣においても、仮に直接雇用であれば時給1200円だったとして、派遣であれば2000円位にはなりますからね。派遣といってもアルバイトではなく、派遣会社が雇用主になるわけですので、労働者はしっかり社会保険にも加入できます。
長期雇用のメリットである安定性には少々欠けますが、それでも時給が高いのは魅力です。時給2500円でフルタイム勤務なら、夜勤がなくても年収税込み500万円以上は十分見込めます。
看護師有資格者であれば、よほど人格に問題がない限り、職に困ることはないでしょう。それで健康で元気であれば、70歳を超えても雇用の道は十分確保されています。すごいですね。
病棟看護師は確かに過酷です。
しかし、施設看護師は多様なスキルが求められると思います。
何故なら、施設は病院と違い、生活が重視されるからです。入居者の生活を支える上での看護師の役割は、非常に多様だと思うのです。単純に医療行為をしたりするだけでは務まりません。
施設には、医療機器もほぼなく、備品も病院に比べれば非常に少ない。医師が近くにいないので、かなり重要な判断を看護師には求められる。救急搬送を要請するか、経過観察すべきか、というような判断です。これを判断するには、入居者様の状況をしっかり把握し、かつスタッフとの連携が必須です。
把握するのも、「時間単位」です。特に状態が芳しくない高齢者であれば、時間ごとに状況が変わるからです。
場合によっては訪問診療医・病院の連携室・地域のケアマネさん等と密接な連携を取らなくてはならない。
私は、コミュニケーション力や判断力という部分においては、病棟看護師よりも施設看護師の方が重要視されていると言っても過言ではないと思っています。
病院は治療をする(受ける)場、施設は生活をする(環境を提供する)場です。
役割が全く異なるわけですから、当然に求められるものが違うのですね。
つい熱くなってしまい、長くなってしまいました。
看護師に限らず、介護職もそうですが、この人材不足の状況は本当に何とかしなくてはならない。
私は、現役の看護師さんとできるだけ接触して、座談会のようなものがしたい。
そして、この問題を提起し、どういう方向性にするのが望ましいのか、一緒に考えたいと思います。
そこに、もしかしたら答えが隠れているような気もするのです。
このコラムの執筆専門家
- 寺崎 芳紀
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
介護事業所の開設から運営まで、オールワンでお手伝いいたします
有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。
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