- 寺崎 芳紀
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
- 東京都
- 経営コンサルタント
-
03-5858-9916
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
- 荒井 信雄
- (起業コンサルタント)
こんにちは!株式会社アースソリューションの寺崎でございます。
本日は、居宅介護支援事業所における「特定事業所集中減算」について取り上げます。
特定事業所集中減算とは、一言で言うと「囲い込みの抑制」です。
介護保険サービスの基本は、ご利用者様の自立を支援することであり、その前提としてご利用者様(多くの場合はご家族様が本人の代わりになることが多い)と事業者との契約により、本人やご家族が理解し納得した上でサービスを利用することになっております。
しかし、制度が始まってからというもの、民間事業者を中心とした法人が営利を目的として自社のサービスをもれなく利用するよう誘導(半強制的に利用させたケースもあり)し、ご利用者様がいろいろサービスを選択したくても事実上できないということが浮上するようになりました。
ご利用者様がサービス利用を決めるにあたり、ケアマネさんからのご紹介や提案は非常に大きな威力があります。ケアマネがいる居宅介護事業所に、例えば訪問介護事業所や通所介護事業所、福祉用具貸与事業所等が併設されているような法人では、会社の意向によりご利用者に選択の余地を与えず、すべて自社サービスを利用することを前提に、ケアマネさんに居宅サービス計画を作成させるといった問題が起こったのです。
これを重く見た国は、利用者の選択に資する観点から、居宅介護支援事業所のケアマネが特定の法人のサービスをケアプランに位置付けることを抑制するために、「特定事業所集中減算」というものを設けました。
新設後、改定等がありましたが、現在は基本的に下記のような運用になっております(詳細は割愛)。
①すべての居宅介護支援事業所が、判定期間内に作成した居宅サービス計画(予防支援を除く)において、最も紹介件数の多い「法人」事業所の割合を算出し、同一法人事業所が80%を超える場合に減算を行う。
②各事業所は自己点検を行い、市区町村への報告は毎年度2回行う義務がある。減算に該当しない場合も、自己点検書(市区町村指定の様式)は2年間(地域によっては5年間)保存の義務がある。
③対象事業は「訪問介護」「通所介護(地域密着型含む)」「福祉用具貸与」の3つ。
④減算に該当した場合、利用者1名につき月200単位を所定単位から減算する。これは、①に1つでも該当した場合には、その月の全利用者に対して減算を適用する。
⑤特定事業所加算を算定している場合、当該減算を算定したいことが加算算定の要件となるため、万一当該減算となった場合は特定事業所加算を取り下げることとなる(すでに算定した加算については過誤調整の上返還する)。
ということになっております。
2018年報酬改定において、居宅介護支援事業所においては重要事項説明にあたり、「サービスの調整にあたっては、利用者に複数の選択肢を用意し、十分な説明をした上で位置付けること」「サービス事業者の選定をした場合において、事業所は利用者に対しその理由を説明する」ことを義務づけ、それを行わない事業所については基準違反として報酬返還の対象とすることとなりました。
囲い込みについては、非常に厳しい状況になっているわけです。
上記の報酬改定とともに、この特定事業所集中減算というものは、サ高住等に併設されている介護事業所への規制を主として規制しているように思えます。
実際、2021年の報酬改定においては、サ高住や住宅型有料老人ホームに併設されている介護事業所については今後実地指導を強化し、一定件数以上指導を実施した場合には、国が自治体に対してインセンティブを増額するという動きもある位です。
確かに、利用者様の意向や希望を完全に二の次にして、自社の利益だけを追求しすぎることについては、ある程度の抑制も必要でしょう。
しかしながら、特定の法人のサービスに集中させることが、そんなにいけないことでしょうか?
中身を吟味することなく、一律に減算するという方法が、本当に最良のやり方なのでしょうか?
十分な説明を行い、ご利用者が納得されたのであれば、それで十分だと思います。
また、特定の事業所に利用が集中するというのは、それだけ皆さんに支持される優良事業所である、という見方はできないでしょうか?
どの事業所も、ご利用者様に喜んでいただくため、地域に根差すため、社会に貢献するために、少なからず一所懸命工夫を凝らし、サービス提供に取り組まれているはずです。ケアマネも、そういう事業所であれば、自信をもってご利用者に奨めることができます。人気のない、評判の悪い事業所を、どのケアマネが利用者様に提案するでしょうか。
もっとも、この減算には例外もあって、「正当な理由」が認められれば減算はされないものの、それは本当にレアなケースについてであって、いわゆる「行列のできるサービス事業所」等のようなケースについては全く関係なく適用されます。
個人的な意見ですが、上記下線(太線)部分のところをしっかり行いさえすれば、こんな減算など必要ないと思います。むしろ、たくさんの方が行列を作る位に評判のよい事業所がたくさん増えた方が、よほどご利用者様やご家族、そして地域社会にとってメリットが大きいとさえ感じます。
少々乱暴ですが、こんな減算、早く廃止してほしいです。
このコラムの執筆専門家
- 寺崎 芳紀
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
介護事業所の開設から運営まで、オールワンでお手伝いいたします
有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。
このコラムに類似したコラム
介護保険最新情報(厚生労働省通知)Vol.876は・・・ 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2020/10/06 08:00)
ご利用者様への説明(介護サービスの概算料金) 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2020/07/16 08:00)
介護サービス情報の公表制度 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2020/06/30 08:00)
ケアマネや病院MSWの利益供与 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2020/06/27 08:00)
介護事業所の実地指導について 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2020/06/24 08:00)