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対象:企業法務
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〜精神活動が含まれる歯科治療システムの発明〜(第12回)
河野特許事務所 2009年3月2日
執筆者:弁理士 河野 登夫
(4)以上のように,本判決は発明の成立性を「全体として判断する」こととしたが,
本願発明1 の本質が,人の精神活動を支援する,又はこれに置き換わる技術的手段を提供するものであるとか,
本願発明1 はコンピュータに基づいて機能する,歯科治療を支援するための技術的手段を提供するものであるとか,
「システム」の辞書的定義によれば構成要素として人は排除されない,
などの認定事項には自然法則の利用性を肯定する根拠となるところは見られない。そして,前述のように「特段の事情がある」とリパーゼ判決を踏まえて,「発明の本質」を検討するために発明の詳細な説明を参酌したが,合理的な結論を導き出せたとは思えず,この点にも疑問がある。
裁判所は「審査基準」に拘束される必要は無いかもしれない。しかし,審決は「審査基準」に則って行われているのであり,その審決を破棄するのであれば,審決の拠り所である「審査基準」に基づく審決での判断の誤り,または「審査基準」自体の不合理についての言及が不可欠であると思われる。
言語本来の意味からは「自然法則の利用性」を認め難いコンピュータ・ソフトウェア関連発明を,特許法の目的に則り,科学技術の進歩と産業構造の変革に対処しつつ保護するために,30 年以上をかけて,また,日米欧3 極の国際的調和を図りつつ構築してきた「審査基準」を一顧だにすることなく,本願発明1 の発明の成立性を安直に認めたことに対して疑問を呈さざるを得ない。
(第13回に続く)