プライベートがあってこその仕事、仕事があってこそのプライベート
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少し前の話になりますが、プロ野球のある外国人投手が、妻の出産予定日と登板ローテーションが重なったため、監督の配慮でチームのローテーションを全面的に組み替え、登板を一日前倒しにしたそうです。
通常、外国人選手の妻は母国で出産することが多いですが、日本で出産するということもあって、できるだけフォローしてあげたいという配慮だったようです。
以前、あるプロスポーツ選手が言っていたことですが、試合直前に父親が危篤となってしまい、監督からも外れて良いと言われたにもかかわらず、「自分を見に来てくれたお客さんのためには試合に出なければならない」と言って試合に出場し、父を看取ることはできなかったという話を聞いたことがあります。
こういう話が美談にされたり、場合によってはそれが当たり前のような扱いをされた頃から比べると、時代もずいぶん変わったものだと思います。
一昔前は、このスポーツ選手のように、「この人がいなければ」という人に限らず、とにかく仕事が優先という光景が多く見られました。
会社員では、さすがに親に死に目に会えないようなことまではなくても、家族や友人の記念日やお祝い事などを、仕事のせいで参加できなかったりキャンセルしたりということは、誰でも一度や二度はあるでしょう。
私のような個人事業者であれば、代わりになる人がいないということで、それもやむを得ない部分がありますが、そもそも組織で仕事をする理由には、誰かがいなくてもそれを他の誰かがカバーして、仕事を止めずに円滑に進めるということがあります。
会社に雇われる立場からすれば、「自分がいないと回らない」ということ自体がおかしいはずですが、なかなかそうも言えないことも多いでしょう。
ただ、この出産立ち合いを見てもわかるように、これはリーダーが決断すればできることです。リーダー自身が仕事優先は当たり前だと思っていれば、個人に対する配慮はされにくくなります。
やはりこれからのリーダーは、「プライベートがあってこその仕事である」ということを、理解していなければなりません。
しかし、その一方で、最近は個人の事情を過剰に強く要求する社員を見かけます。周りが忙しくても、それにはお構いなしの休暇取得、大した事情とは思えない理由での残業拒否、言われた仕事以外はやろうとしない消極性などがあります。中には、「彼女に振られて仕事が手につかない」と言って、本当に何も仕事をしようとしなかった人の話を聞いたことがあります。
やはり、「仕事があってこそのプライベートである」という部分も、考えなければなりません。
よく「仕事とプライベートの切り分け」を言う人がいますが、私が思うのは、仕事とプライベートは切れ目なくつながっていて、はっきり切り分けることは難しいということです。
仕事上の仲間でも、仲良くなれば休日に遊びに行くこともあるでしょうし、そこでも仕事にかかわる話が出ることもあるでしょう。
仕事メンバーとの飲み会でも、本人のとらえ方によって、仕事の延長だという人も、プライベートだという人もいます。
感情に左右されるのは、認められることばかりではありませんが、仕事でうれしいことがあればプライベートも気分が良いですし、プライベートで落ち込めば、仕事の進みも良くないでしょう。
このように、仕事とプライベートのバランスは、いろいろなことがその時の状況の中で揺れ動いているはずです。
登板ローテーションを配慮された外国人投手も、プライベートで落ち着いて出産に立ち会えれば、その喜びは必ず仕事にも良い影響をもたらすはずです。
「プライベートがあってこその仕事」「仕事があってこそのプライベート」ということがうまくかみ合っていくと、人生はもっと楽しくなっていくように思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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