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組織改革で「人材登用を優先する会社」と「人材整理を優先する会社」の違い

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社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集 現場の事例・私の体験

 ある中堅企業の社長との、ちょっとした立ち話をしたときのことです。

 その人の会社は事業譲渡で別の企業グループの子会社となり、それまで役員の立場だったご自身は、現在は子会社の社長という立場で経営にあたっています。

  今までなかった親会社ができて、その企業グループのオーナーの影響で、会社の雰囲気はずいぶん変わったといいます。


 親会社のオーナーは、会社の運営に関して様々な指示をしてくるそうですが、自分の意見と違うことがあまりにも多いので、意見を言ったり反対したりはするものの、結局は押し切られてしまうそうです。

 そんな動きが社員に直接影響することも出てきていて、社員にとってもこれまでの組織運営とは大きく違うため、嫌気がさして退職する社員が出始めているとのことです。

 「経営として何が正解なのかはわからないが、自分の考えとは全く違うので、それに合わせるのはさすがに難しい」と言っていました。

 

 私も会社の合併を何度か経験しているので、オーナーや企業トップの考え方次第で、社風が大きく変わることは実際に体験しています。M&Aのような局面では、それまでうまくいっていたことや、自分たちが強みと思っていたこと、良い意味での特徴と考えていたことまで変更を迫られることがあり、納得できないことも多々あります。

 会社経営において「何が正解か」というのは、経営者や経営幹部の主観による部分はかなり大きいと思います。

 

 M&Aのような、大きな組織変革の場面では特にそうですが、組織体制を考えるにあたって、人材の入れ替えという話が必ず出ます。

 人が変わると、組織の雰囲気や風土はスピーディーに変わりますから、組織改革ではよく行われる施策ですが、その進め方には二つの考え方があります。

 一つは、「新たな人材の登用」から始める場合と、もう一つは「今いる人材の整理」から始める場合です。前者は本当の意味での適材適所、後者はリストラや排除のニュアンスが強くなります。

 

 今回話題にした社長の会社では、一部で人員整理が優先される傾向があるようです。社内では「組織の機能化」や「人員の適正配置」などの、きれいな言葉で語られているようですが、実際にやっているのは組織上のポジションを親会社とつながっている人材にリプレースすることと、転籍や降格や退職勧奨などの人員整理の施策です。

 

 私が見てきた経験上、こういう中で何が起こるかというと、一つは人がいなくなった現場が急激に回らなくなってしまうことです。

 現場が回らなくなくなるというのは、単純に仕事の穴が開くからです。業務効率の悪さがあっても、そのプロセスを見直さずに人員だけを減らせば、全体の仕事に滞りが出るのは当然です。人数だけ合わせれば解決するものでもありません。

 

 もう一つは、人員整理の対象以外の人でも、優秀な人から会社を辞めていってしまうということです。

 人員整理というのは、社内に無言のメッセージを発します。政治的な意図の人材配置が重なればなおさら、能力が高い人材ほど「自分も同じ扱いをされるかもしれない」「そういう扱いをする会社は信頼できない」などといい、中核を担える人材から先に組織を後にします。

 

 これとは逆に、本質的な適材適所を考えて、能力に見合った新たな人材の登用や配置を優先すると、まずは現場のリーダーシップや仕事の進め方が変わります。

 新たな組織の方向性に沿った変更がされるので、そこで居心地が悪くなるのは、その方向性に合わない人たちや変化を嫌う人たちです。それ以外の人材にとっては、変化によって居心地がよくなるので、その人たちが力を持つことで、組織改革は良い形で進みます。

 

 これは、あくまで私の経験上の主観でしかありませんが、長い目で見て結局うまくいっているのは、前者の「新しい人材登用を優先する会社」です。先に人員整理を優先した会社で、その後の組織改革が思い通りに進んだ会社を、少なくとも私は見たことがありません。良い人材が残らず、元からの課題も温存されたままになり、改革しづらい体質が強化されます。

 組織改革を心地よいと思う人材は、その組織の中心を担うべき人材ですが、それを見極める前の人員整理は、良くない感情が波及してしまうことなどを考えると確実にマイナスです。

 

 人に関わることは、焦っても決して良い結果にはつながりません。経営者は正解と思っても、社員の賛同や納得が得られないことを急激に進めようとするのは、結局回り道でのゼロ回答にたどり着きます。

 「自分の考える正解」を理解してもらうには、説明する労力も時間も必要ですし、相手の考えと折り合いをつけることも必要です。息のかかった人材で周りを固め、異なる意見を排除することから始めるのは、組織改革では得策ではありません。

 本当の適材適所から始めるのが、組織改革の最も近道ではないでしょうか。


 

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