- 野平 史彦
- 株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
- 千葉県
- 建築家
対象:住宅設計・構造
昨年の暮れは「子供部屋って何だ?」と題して好き勝手な事を書いてきましたが、2009年、年初めは「家族の団らん」についてちょっと書いてみましょう。行き当たりばったりなのでシリーズとして成り立つのかどうか不安ではありますが、、またお付き合い下さい。
02−1:リビングって何するところ?
ちょっと前までは、2DKとか3DKとか言っていたのが、いつからか2LDKとか3LDKというようにLが入る様になった。
昔はLがなくて済んでいたのが、Lが入る様になった、というのは日本の家屋にリビングという余裕の空間ができた、ということなのだろうか?
それで、リビングというのは何をするところなのだろう?
昔は「茶の間」というのがあったが、それとは違うのか?
前回、「何故、子供部屋と呼ぶのか?」で、フランスの住宅の例を挙げたが、フランスにおいてリビングはSALON、即ち、客を招き入れる場であった。
日本でもかつてはとてもその場に似つかわしくない様な応接セットなんか置いて、客を招き入れる体裁を整えていた時期があったが、今ではめったに来る訳ではない来客のためにそんな体裁は必要ない、もっと家族がくつろげる場であることに徹しようという風に変わって来た。
日本では玄関までがパブリックな場で、玄関を上がればもう家族だけの空間となる。
それで、リビングは家族がくつろげる“団らんの場”となったのか? と言えば、どうもそうではないような気がする。
どの家にもリビングにはテレビがある。
今では、家の中に何台もテレビのある家は珍しくないが、リビングにあるテレビは特別である。
まず、一番大きくて立派なテレビはリビングにある。
そして、そのテレビに向かってソファや椅子が配置されている。
リビングを計画していると必ずテレビを何処に置くか、ということが一番の問題になる。
即ち、リビングとはテレビを見る場なのである。
では、テレビは家族を集めて、リビングを“団らんの場”にする上手い舞台装置になったのか?
リビングには家族皆で見られる様に家族分の席が用意されるが、しかし、現実には家族全員でテレビに向かっていることはまずない。子供から大人まで世代を超えて楽しめる番組などそうないからだ。家族が皆、それぞれ見たい番組が違うのに、ひとつのテレビでは意味がないのである。
子供達はお父さんが帰って来る前にリビングでアニメを見て、夕食を済ませるとそそくさと自室にこもる。例え、家族全員がリビングに揃ったとしても、皆がテレビに注視していてはそうそう家族の会話など生まれない。
だから、リビングは“団らんの場”には成り得ず、ただ単に「テレビの間」でしかない。
では、ダイニングが“団らんの場”なのか?
ある資料によると、テレビを見ながら食事をする家庭は76%もあるという。
これでは、やはりダイニングも“団らんの場”ではない様だ。
では、今の家には“団らんの場”はないのか? はたまた必要ではないのか?
(次回は、団らんの歴史を探ってみよう!)