違法な特許出願の回復が無効理由となるか(第3回) - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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違法な特許出願の回復が無効理由となるか(第3回)

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違法な特許出願の回復が無効理由となるか(第3回)
〜特許無効の抗弁事由〜  
河野特許事務所
米国特許判例紹介(第18回)
Aristocrat Tec. et al.,
Plaintiffs-Appellants,
v.
International Game Tech. et al.,
Defendants-Appellees.
                       
                       2008年12月29日 弁理士 河野 英仁
                
 
2.背景(2)
Aristocrat(以下、原告)とInternational Game Technology(以下、被告)とはスロットマシン等の電子ゲーム機器の分野において競合関係にある。原告は、U.S. Patent No. 7,056,215(以下215特許)を所有している。215特許はスロットマシンに関する技術である。

 原告は1997年7月8日米国に2つの仮特許出願*2を行った。その1年以内に原告はこれら2つの仮出願に基づく優先権を主張し、オーストラリアにPCT出願を行った。PCT出願はその後公開された。

原告は移行期限である2000年1月10日が迫っているにもかかわらず米国特許庁に対し国内移行費を支払っていなかった。仮出願の日から30ヶ月以内に国内移行費を支払わない場合、米国特許法第371条及び規則1.495*3に基づき、特許出願は放棄されるため、USPTOは原告に対し米国国内移行費を支払うよう要求した。

 USPTOは期限を超えても移行費を受け取らなかったことから、原告に対し出願の放棄に関する通知を行った。なお、当該通知には、出願の回復を主張するための、規則1.137(a)(不可避の遅延)、または、1.137(b)(故意によらない遅延)*4に基づく嘆願書を提出することができる旨が記載されていた。

 原告は規則1.137(b)に基づく嘆願書を提出した。原告は嘆願書に、国内移行費の支払いの遅れは故意でない理由を記載した。2002年9月3日USPTOは規則1.137(b)の要件を満たすとして出願を回復させた。出願回復後、審査が進み、2006年6月6日に215特許が成立した。

 原告は2006年6月被告を特許権侵害であるとしてカリフォルニア州連邦地方裁判所に訴えた。被告は原告の215特許は無効であると反論した。

 被告は、215特許に係る特許出願は、手続き期間を徒過しており、米国特許法第133条*5の規定により出願放棄が擬制され、しかも、原告が嘆願書において手続きの徒過が不可避であったことを十分に説明していなと主張した。従って215特許は米国特許法第133条の規定に反して違法に回復された出願に基づく特許であり、無効理由を有すると主張した。

 地裁は、出願が違法に回復されたものであり特許は無効であるとの判決をなした。原告はこれを不服として控訴した。